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» 2017年10月07日 06時00分 公開

夏目の「経営者伝」:サイバーエージェント社長が明かす「新規事業論」 (3/3)

[夏目人生法則,ITmedia]
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社会的意義よりも面白さ

 そして、彼の経営者としての道も、リスクとリターンのシーソーをはっきりと意識して進んできている。起業のときも同じなのだ。

 「そもそも起業当時の僕には、お金もなく、知名度もなく、自分がコケたところで、失うものはほとんどなかったんです。すなわち、マイナスが限定されている分、起業にはプラスしかなかった。もちろん『AbemaTV』も同じです。通信速度が速くなり、スマホが登場し、自身もスマホで動画を見るようになった今なら成功する確率が高い、と判断したからです」

 すなわち、期待値が高い状況が訪れたから彼は賭けた、というわけだ。一方、興味深かったのは「AbemaTV」の意義を訊ねたときの藤田氏のコメントだ。テレビや雑誌などの既存メディアは、既に「シニア向け」になりつつある。一方「AbemaTV」の主な視聴層は若者。若者目線のメディアを手に取り戻す、という社会的意義もあるのではと訊くと、彼はこう答えた。

 「僕はそんなに大上段に構えてビジネスを始めるタイプじゃないんです」

 藤田氏は笑うと顔がクシャッとする。真っ向から反論しても印象が柔らかいのは、この顔のためかもしれない。

 「取材でも、事業の社会的意義を聞かれることは少なくありません。もちろん、投資家や社員のなかにも、僕にそれを求める人がいます。でも僕は『世の中のために』が先行するタイプの経営者じゃありません。世の中にあるサービスの全てが社会的意義のために存在しているわけではないですよね。根っこにウソがあったら、人はついてきませんよ。それより僕は、自分も周囲も『これをやったら面白いんじゃない?』と盛り上がることをやりたいんです」

 世の中の役に立つサービス・商品をつくればビジネスとしても大きく成長するはずだ。だけれども、藤田氏に言わせれば、順番は逆なのだ。

 「『世の中のため』とか言っていると、それに縛られてしまい、大きなチャンスがあってもチャレンジできなくなってしまうこともあるでしょう。逆に、いいビジネスになることをやれば、社会的意義も後からついてくるのではないでしょうか……」

 確かに、時代はそう動く。そう、彼が時代の先端に居続けるのは、彼が「リアリスト」で、常に最大のリターンが得られる「アツい場所」にいるからではなかったか――。

 次回は、「AbemaTV」について聞く。

著者プロフィール

夏目人生法則

1972年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店入社。退職後、経済ジャーナリストに。現在は業務提携コンサルタントとして異業種の企業を結びつけ、新商品/新サービスの開発も行う。著書は『掟破りの成功法則』(PHP研究所)、『ニッポン「もの物語」』(講談社)など多数。


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