将来稼ぐ力を予測する「AI融資」の狙いとはターゲットは若者(1/3 ページ)

» 2017年10月24日 11時00分 公開
[鈴木亮平ITmedia]

特集「メガバンク × フィンテック」:

金融ビジネスの最前線にあるFintech(フィンテック)。モバイル決済やAI(人工知能)を活用した資産運用などのサービス、仮想通貨など、日本でも取り組みが広がりつつある。国内金融業界で圧倒的な規模を誇るメガバンクも動き始めた。なかでも、ベンチャー企業や異業種企業と協業を探る、従来の金融ビジネスと一線を画す取り組みが注目を浴びる。メガバンクの取り組みから、金融サービスの将来像を探る。


 AI(人工知能)が利用者の「将来稼ぐ力」を分析し、適切な金利を決める――。

 ソフトバンクとみずほ銀行は2017年9月、合弁会社J.Scoreを立ち上げ、AIを活用した個人向けの融資サービス「AIスコア・レンディング」の提供を開始した。申し込み、審査、振り込みまでの全てがスマホ上で完結し、最短30分で審査結果が分かる。

 最大の特徴は、低金利を実現している点だ。例えば、「アコム」や「プロミス」といった大手消費者金融が設定している金利は、約3.0%〜18.0%。それに対して同サービスは0.9%〜12.0%である。

 従来の貸金業者とは何が違うのか、なぜここまで低い金利で貸し出すことが可能なのか。J.Scoreの経営企画部、小島和敏部長によると「利用者の“将来稼ぐ力”をAIに分析させて、独自の信用基準を構築しているから」だという。どういうことか。

 小島氏に話を聞いた。

photo AIを活用した融資サービス「スコアレンディング」。スコアに応じて金利が下がるという

「将来稼ぐ力」を分析

photo 小島和敏部長

――J.Score設立の経緯について教えていただけますか。

小島: もともと、ソフトバンクが2015年に出資をした米国のフィンテック企業、SoFi(ソフィ)のビジネスモデルを「日本でも展開しよう」という話になったのがきっかけです。

 ソフィは融資の審査などにテクノロジーを活用することで、これまで(返済能力の)信用が比較的低くかった若者でも低金利で融資が受けられるサービスを展開しています。サービスを開始したのは約6年前ですが、融資残高は既に6000億円を超えるなど、急成長しています。

 ソフトバンクとみずほ銀行は、さまざまな事業で協業している関係だったこともあり、両社の共同出資でJ.Scoreを設立しました。

――従来の貸金業者とは、どのように違うのでしょうか?

小島: 従来の貸金業者は主に、「現時点での収入」から信用度を審査して融資額や金利を決めていますが、当社では「将来の収入はこう変わる」という予測を判断材料に加えています。ここが一番大きな違いですね。

 当社は「こういうの属性(職種、趣味、性格、行動パターン)の人はこんな傾向がある」という相関データを基に、利用者が数年後、どのくらいの収入を得ているのか予測するシステムを構築しております。どういう属性の人だと、将来的に年収がどうなるのか、貸し倒れのリスクはどのくらいあるのか。個人に関するさまざまな情報を、任意で入力してもらうことで、利用者の信頼度をAIが点数化(スコアリング)し、金利や融資額に反映させているのです。

 現時点での収入が重視される既存の融資サービスでは、他の世代と比べてまだ収入が低い20〜30代がお金を借りようとすると、どうしても金利が高く設定されてしまう課題がありました。

 しかし当社では、多様な情報から将来稼ぐ力を分析し、スコアリングに加えることで、低い金利で融資することができるようになっています。また、AIスコア・レンディングでは、申し込みから振り込み(融資)まで、全てスマホ上で完結する仕組みになっており、他社のように店舗を全国に構えているわけではないので、最小限の人員で運営ができています。

 例えば、他の大手消費者金融などでは、約1000〜2000人のスタッフを投入していますが、当社は100人以下です。効率的な運営によって人件費を抑えられる分、金利に還元できています。当社がこのサービスで実現したいことは「若者はお金を借りにくい」という現状をフィンテックで解決することなのです。

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