ビジネスの現場で良く耳にするようになった「デジタルトランスフォーメーション」(以下、DX)。もともとはスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が2004年に「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念を提唱したことが始まりだが、企業におけるDXとは一般的に、既存ビジネスにおけるデジタル化の推進によって主に生産性の向上や、新たなビジネス機会を創出することを指している。
とは言っても、多くのビジネスパーソンにとってDXとは何なのか、まだまだピンとこない人も多いのではないだろうか。
そこでITmedia ビジネスオンラインでは、DXに関する有識者や専門家たちの意見をシリーズでお伝えしている。今回はIT専門調査会社IDC Japanのリサーチバイスプレジデント、中村智明氏に話を聞いた。
――約2〜3年前からDXというワードを良く耳にするようになりました。貴社ではDXをどのように定義していますか? そして、なぜ注目されているのでしょうか。
中村: 当社では、DXを「企業が“第3のプラットフォーム技術”を利用して、新しい製品やサービス、価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。
第3のプラットフォームというのは、クラウドを中心とした情報基盤のことです。ちなみに、第1のプラットフォームは「メインフレーム」、第2のプラットフォームは「クライアントサーバーシステム」のことを指します。
DXが注目されている背景は、このクラウドの台頭によってIT活用のハードルが下がったことが大きな要因であると考えています。実際、IT部門だけではなく業務部門も簡単に使いこなせるIT製品が数多く出てきました。「ITは難しいもの」ではなくなったということですね。
これまで「縁の下の力持ち」だったITが、ビジネスの最前線に躍り出たことによって、単なる効率化やコスト削減だけではなく、売り上げを伸ばすためのアイテムとしても期待されるようになってきたわけです。
さらに、ITがサービスそのものになったことで、「ITなしにはビジネスは成立しない」という時代になりました。これまでは、ITを活用しなくても新しいビジネスを作ることができました。しかし、今ではITの活用なしに新規ビジネスを創出したり、既存ビジネスを持続させることが困難になってきたのです。
例えば、小売り業界でも、集客から決済まであらゆるサービスがITに置き換わっており、一部の従来型モデルの店舗は競争に勝てず、苦戦しています。
大手自動車メーカーも人工知能(AI)の研究などに巨額のIT投資をしていますよね。それは、DXに取り組まなければ今後のビジネスで勝つことができなくなるという危機感の表れです。
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