話題の「パンクしないタイヤ」、各社が開発競う東京モーターショー2017

» 2017年10月26日 17時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 「東京モーターショー2017」では、注目を集める“パンクしないタイヤ”を大手タイヤメーカー2社が展示している。

ブリヂストンは自転車子会社の販路を生かす

 業界最大手のブリヂストンは、子会社ブリヂストンサイクルと共同開発した自転車用タイヤを出展。特殊形状の樹脂製スポークで荷重を支えることで空気を不要とする技術「エアフリーコンセプト」を使用し、パンクの心配がない点が特徴。スポークはリサイクル可能で、素材を効率よく利用できる点もメリットの一つだ。

photo ブリヂストンの「パンクしない自転車タイヤ」

 開発担当者は「13年の発表後に改良を重ね、乗り心地と耐久性を向上させた。実用化は19年を予定している。老若男女を問わず幅広い層がターゲットだ」と話す。

 記者が体験した試乗では、やや硬さは感じるものの、既存の自転車とほぼ変わらない乗り心地との印象を受けた。段差を昇降する場合でも、振動や衝撃は既製品とほぼ同等だった。

 開発の経緯は、「より安全で環境に優しいタイヤを届けたいとの思いから開発をスタートした。これまで破損やパンクでタイヤを買い替えていた顧客を逃すリスクは否定できないが、より価値ある商品を提供することを最優先に考えた」と説明する。

photo パンクしないタイヤを装着した自転車

 課題は重量だ。「スポークには、まだ削って軽くできる部分が残されている。耐久性とのバランスを考慮しつつ、軽さ・安全性・乗り心地を両立させた“最終形”を世に出したい」という。

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 自動車用も開発を進めているが、従来と異なる形状のタイヤの使用可否が道路交通法で明文化されていないため、公道を走行する自動車が装着するには法改正が必要な状況だ。商品化には時間がかかるとの見方が強いが、ブリヂストンは将来性を見込んで引き続き開発に注力する方針だ。

住友ゴム工業は「ゴルフカート」に活路を見いだす

 業界2位の住友ゴム工業も、空気不要でパンクしないタイヤ「GYROBLADE(ジャイロブレイド)」を出展。ブリヂストンと同様、タイヤトレッドとアルミ製ホイールの間に特殊樹脂のスポークを採用し、衝撃吸収性を高めている。

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photo GYROBLADE(ジャイロブレイド)

 開発担当者は「当社は自転車子会社を持たないため、自転車用タイヤを展開しても販路がない。あくまで自動車用タイヤの実用化を目指している」と話す。

 ただ前述の通り、こうしたタイヤには公道での走行が困難との課題が残されている。早期実用化と販路の拡大に向け、住友ゴム工業はどのような施策を展開するのだろうか。

 開発担当者は「課題点を逆手に取り、私有地であるゴルフ場で利用するゴルフカートなら需要があると考え、重要な販路に位置付けている」と説明する。

 既に同社が主催するプロゴルフの国内大会「ダンロップフェニックストーナメント」でコースを回るゴルフカートに導入しており、「テストも始めている段階」(同)という。

 商品化の時期は未定だが、今後は実証実験を重ねて安全性を高めつつ、国内のゴルフ場に導入を打診していくという。

 業界3位の横浜ゴムは、車いす向けにパンクしないタイヤを開発中。業界4位の東洋ゴム工業は、自動車用のコンセプトタイヤ「noair(ノアイア)」を9月に発表している。新たな形状のタイヤを巡る、メーカー各社の競争にも注目だ。

photo 東洋ゴム工業の「noair(ノアイア)」=プレスリリースより

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