フィンテック連携の“ハブ”を目指す三井住友FGAIで不正を検知(1/3 ページ)

» 2017年10月27日 11時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

特集「メガバンク × フィンテック」:

金融ビジネスの最前線にあるFintech(フィンテック)。モバイル決済やAI(人工知能)を活用した資産運用などのサービス、仮想通貨など、日本でも取り組みが広がりつつある。国内金融業界で圧倒的な規模を誇るメガバンクも動き始めた。なかでも、ベンチャー企業や異業種企業と協業を探る、従来の金融ビジネスと一線を画す取り組みが注目を浴びる。メガバンクの取り組みから、金融サービスの将来像を探る。


 10月上旬に開催された、IoTなどの最新技術が披露される展示会「CEATEC JAPAN 2017」。ここに、三井住友フィナンシャルグループ(FG)が初めて出展した。

 展示したのは、IDとパスワードの代わりに指紋や声、顔で本人確認する生体認証のプラットフォーム。インターネットバンキングやネット通販などへの活用を見込む。外部の企業と連携して開発した技術だ。デジタル技術を活用してビジネスチャンスをつかもうと、積極的な動きに乗り出していることが分かる。

 このような取り組みを推進しているのが、2015年に新設したITイノベーション推進部。ベンチャー企業などが持つアイデアや技術を取り入れながら、新しいビジネスの開発に取り組む組織で、ITや鉄道などの異業種から転職してきたメンバーが半数を占める。その担当者に、三井住友FGが注力するフィンテックの取り組みやその狙いを聞いた。

photo 三井住友FGが9月に東京・渋谷に開設したオープンイノベーション拠点「hoops link tokyo」(三井住友FGのニュースリリースより)

AIでカード不正利用検知の精度を向上

 三井住友FGが開発に力を入れる分野の1つが、人工知能(AI)を活用したサービスだ。ITイノベーション推進部オープンイノベーショングループ長の桑原敦史氏によると、「AIについては、10以上の実証実験を進めている」という。

 その1つが、クレジットカードの不正利用を検知する技術。不正の疑いがある取引を検知するシステムは現在もあるが、AIを活用することでその精度を高めることができるという。

 現在のシステムでは、カード利用の金額や時間などを規則的にチェックし、不正取引や不正の疑いがある取引を検知する。しかし、特定の条件を満たす取引を見つける「型にはまった抽出」(桑原氏)であるため、実際は不正ではない可能性もある“グレー”の取引を多く検知してしまう。

 数多く検知された疑わしい取引の1つ1つを詳しく調べるのは、人だ。店舗や利用者に問い合わせをして確認する必要がある上、そのほとんどは問題がない取引だという。

 本当に不正利用された取引を見極める精度を高めれば、問題のない取引まで確認する必要がなくなる。それを実現するために期待しているのが、AIによる学習だ。過去のカード利用に関するデータをAIに学習させ、不正利用を検知するアルゴリズムを開発した。

 実験を重ねると、疑わしい“グレー”の取引を検知する件数が大幅に減ったという。ITコンサルティングを手掛けるJSOLと共同で、実用化に向けた実証実験を進めている。

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