金融ビジネスの最前線にあるFintech(フィンテック)。モバイル決済やAI(人工知能)を活用した資産運用などのサービス、仮想通貨など、日本でも取り組みが広がりつつある。国内金融業界で圧倒的な規模を誇るメガバンクも動き始めた。なかでも、ベンチャー企業や異業種企業と協業を探る、従来の金融ビジネスと一線を画す取り組みが注目を浴びる。メガバンクの取り組みから、金融サービスの将来像を探る。
7月末、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が開催したあるイベントの会場は、熱気にあふれていた。ベンチャー企業の事業立ち上げを支援するプログラム「MUFG Digital アクセラレータ」第2期の最終プレゼンテーションが行われていたのだ。7社の参加企業が、自社の技術や事業プラン、将来像について熱弁をふるった。
この取り組みでは、MUFGが先進的なデジタル技術やアイデアを持つベンチャー企業に対して、ビジネスプランの策定や事業パートナー選定などを支援し、共に新事業の立ち上げを目指す。2015年に立ち上げ、16年に第1期、17年に第2期のプログラムを実施した。
大企業が「オープンイノベーション」を掲げ、ベンチャー企業などと連携する動きは、金融業界でも活発になっている。金融機関の中でもいち早くフィンテックベンチャーとの協業を模索してきたのがMUFGだ。ベンチャー企業との連携に何を求めているのだろうか。担当者に聞いた。
11月10日には第3期の募集を開始する計画だ。16年の第1期では5社、17年の第2期では7社が、それぞれ約100社の応募から選ばれ、プログラムに参加した。4カ月間、専門家やMUFGグループの担当者らによる指導を受け、事業化を目指してきた。
このプログラムの前身となったのが、15年に実施した「Fintech Challenge」。ベンチャーからフィンテックのビジネスアイデアや技術などを募集するコンテストだ。MUFG Digital アクセラレータ事務局の責任者を務める、デジタル企画部プリンシパルアナリストの藤井達人氏は、コンテスト開催の狙いについて、「スピード感を持って、面白いアイデアを形にするため」と説明する。
当時から新事業開発の業務に携わっていた藤井氏は、商品の企画から開発、発表まで、時間がかかってしまうことに問題意識を持っていた。また、面白いアイデアがあっても、収益の判断は難しく、大きな組織で実現することの難しさも感じていた。「海外の銀行はすでにフィンテックに積極的に取り組んでいた。このままでは生き残れない。ベンチャーと組んで、スピード感がある取り組みができないか」とコンテストを考案した。
日本でもフィンテックが注目され始めており、コンテストの認知度は高まった。しかし、優れたアイデアを募るだけだと、ビジネスの育成・支援という意味では限定的な効果しかない。そこで、数カ月間ベンチャーと向き合って事業を理解した上で、金融の知見やリソースを提供するプログラムを立ち上げた。
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