三菱UFJがベンチャーと「ギブ&テイク」で生み出す価値フィンテックを課題解決の糸口に(4/4 ページ)

» 2017年10月26日 11時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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ベンチャーに何を提供できるのか

 金融機関が自社だけではなかなか対応できない課題について、ベンチャーのビジネスを解決の糸口にする。それを実現するオープンイノベーションへの期待は高まっている。藤井氏は「テクノロジーの活用に対する市場からの期待は大きいが、全てを自前でやるのは不可能」と話す。技術や知見を短期間で得られるメリットは大きい。

 一方で、藤井氏が強調するのは、「MUFGからベンチャーに何を提供できるのか」という視点を忘れないこと。「協業相手を“ベンダー”のように扱ってはいけない」と力を込める。ベンチャーが求めているのは、事業資金のほか、金融ビジネスのノウハウやデータ、顧客基盤だ。グループの総力を結集してそれらを提供できることが、MUFGと協業するメリットとなる。

 「『ギブアンドテイク』の関係を構築することを考えると、データ提供だけでは弱いと考えている。MUFGとしてもR&D(研究開発)に力を入れ、『組みたい』と思ってもらえる要素を蓄えていかないといけない」(藤井氏)

 そのためには、M&A(合併・買収)で技術力や人材を獲得する方法もある。今後、金融機関による大型買収案件が増えてくる、と藤井氏は指摘する。「ベンチャーとの関係の持ち方が、より一層進んだものになるのでは」(藤井氏)

海外ベンチャーとも協業したい

 プログラム修了企業による新サービス発表の実績もすでに出始めている。第3期もさらなる発展を目指す。藤井氏が思い描くのは、グローバルを舞台としたビジネスだ。「第3期はアグレッシブな海外ベンチャーを1社入れたい。特に注目するのがアジア。香港やシンガポールなどはフィンテック関連のイベントが多く開催され、ベンチャー企業も増えている」と意気込む。また、MUFGの海外拠点も活用して、海外にビジネスチャンスを求める企業に対する支援も視野に入れる。

 金融業界の枠にとらわれず、幅広いアイデアや技術を持った企業と連携し、成功事例を増やしていきたい考えだ。藤井氏は「技術を持っている企業には、『金融には合わないかも』と思わずに、1回ぶつけてみてほしい」と話す。

 大手金融機関とベンチャー企業が「ギブアンドテイク」でつながる取り組みは、どのように発展していくのだろうか。将来の金融インフラを支えるビジネスの芽が生まれてくるかもしれない。

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