三菱UFJがベンチャーと「ギブ&テイク」で生み出す価値フィンテックを課題解決の糸口に(2/4 ページ)

» 2017年10月26日 11時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

「金融教育」の技術を何に生かすか

 プログラムを通じて、どのような企業と何に取り組んできたのだろうか。2社に対する取り組みを紹介する。

 「ベンチャー企業が持っている技術をどう使うか」という視点でプログラムを進めたのは、第2期に参加した企業「Good Moneyger(グッドマネージャー)」の事例だ。同社は、人工知能(AI)を活用して投資アドバイスを行うアプリや、楽しみながら金融について学べるゲームを開発。その技術を活用した新ビジネスを模索していた。

 指導、支援を行うメンターの1人、三菱UFJ国際投信の商品開発部ファンド・イノベーショングループ、西村彬宏氏は「誰のどのようなペイン(痛み)を取り除きたいのか。ノウハウをどう活用するか。プログラムを通してその疑問を突き詰め、マーケットを絞り込むことができた」と振り返る。

 そのマーケットとは「確定拠出年金」の利用者だ。資産を掛け金として拠出し、運用方法を自ら選んで老後の給付に備える私的年金だが、運用商品の種類は多く、知識がないとどのように選べばいいのか分からない。会社が導入する確定拠出年金に加入しているものの、どの商品がいいか分からず、低リスクの定期預金のままにしている、という人は少なくないだろう。

 Good Moneygerの金融教育の技術を使えば、確定拠出年金の意義を理解して、楽しく商品を選べるようになるサービスを提供できるのではないか。さまざまな議論を重ねた末、そのニーズに注目した。確定拠出年金制度の採用企業には、「金融教育の実施努力義務」が課せられていることから、企業向けにビジネスを展開していく方針だという。

 投資信託の業務を担う三菱UFJ国際投信にとっては、「この部分が単独のビジネスになるのか、という気付きがあった」という。「困っている人がどこにいるか、という視点でビジネスを見直すきっかけになった。新しいプレーヤーが入ることで、お客さまに行き届いていない部分をサービスとして提供できる」と西村氏は期待する。

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