今更と言われてしまいそうだが、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を一気見した。契約結婚から始まる2人の「ムズキュン」な恋を描きながら、日本の家庭問題や男女問題について浮かび上がらせるドラマで、2016年に大ヒット。空前の「逃げ恥」ブームを巻き起こした。白河桃子と是枝俊悟による「『逃げ恥』にみる結婚の経済学」(毎日新聞出版、税込1080円)は、そんな「逃げ恥」から日本の結婚について学ぶ本だ。
ドラマでは、キャッチーなフレーズがたくさん出てくる。「主婦の給料は19.4万円」「専業主婦はブラック労働、好きの搾取」――みくり(新垣結衣)と平匡(星野源)のじれったい恋愛模様にムズムズキュンキュンし、時には枕を抱えてゴロゴロしながらも、鋭い言葉にはっとさせられるのだ。
「逃げ恥」の問題提起を踏まえながら、本書は日本の夫婦の実情や結婚の現実について、統計や資料をもとにていねいに教える。「夫の年収が300万円未満なら、専業主婦は『最低賃金』以下」など、人によってはイヤ〜な気持ちになる章もある。
面白いのは、「逃げ恥」のその先についても触れていること。ドラマでは主人公2人は「雇用関係」ではなく「共同経営責任者」として家庭を作りあげる道を選ぶ。その先には、子どもを産んだり、新しく働き始めたり、仕事が変わったり……といった未来もあるかもしれない。
本書では、2人の将来像をシミュレート。「ワンオペシナリオ」「みくり正社員シナリオ」「Wキャリアシナリオ」の3つのルートを算出している。日本女性の多くが陥っている「ワンオペシナリオ」を読むと、「ドラマではあんなに幸せそうな2人もいつかは……!?」と胃がキリキリしてくる。
未婚の男女の多くが、結婚に対して漠然とした憧れと不安を持っている。その中でも大きな不安は「自分は家庭を持つことが経済的にできるのだろうか」「仕事と家庭を両立できるのだろうか」だろう。本書はそうした漠然とした不安を具体的な数字に落としてくれる。既婚者にとっても、自分の家庭を見直すきっかけになるはずだ。
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