実名制のQ&Aサイト「Quora」、日本進出の勝算は?専門性の高さが魅力

» 2017年11月14日 14時22分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 米Quoraは11月14日、Q&Aサイト「Quora(クオーラ)」の日本語版をリリースした。実名制を採用し、ユーザーが勤務先・専門分野・居住地などを公開した上で質問や回答を行う点が特徴。回答の信頼性を担保し、匿名性が多い他サービスと差別化を図る狙いがある。(関連記事

photo Quoraのアダム・ディアンジェロCEO=左、フリーデンバーグ 桃紅氏=右

 自然言語処理と機械学習の技術を運営に取り入れており、(1)質問の内容を分析し、専門知識を持つユーザーに自動で回答を依頼する、(2)過去のQ&Aの中から、ユーザーの役に立ちそうなものを紹介する、(3)スパム投稿や盗用を検出・除去する――などを行うことでサービスの高品質化を実現しているという。

 例えば「東京とロンドンはどう違うの?」と質問すると、両方の都市に住んだ経験や働いた経験があるユーザーを自動で選定し、回答依頼を送信することが可能という。

 回答が複数件集まった場合は、投票によって最適なものを決定する。回答を支持したユーザー層の情報が分かるため、投票の正確性を保証するとしている。

米Facebookの初代CTOが創業

 米Quoraは、米Facebookで初代CTOを務めたアダム・ディアンジェロCEOが2009年に創業。ユーザーの登録料・利用料は無料とし、広告モデルによって収益を得ている。

 これまでは英語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、イタリア語――の5カ国語に対応しており、ユニークユーザー数は月間2億人を超える。

 英語版では、スタートアップの立ち上げを志すビジネスパーソンの利用が多く、起業に関する質問をしてビジネスのヒントを得たり、専門領域に関する回答を積極的に行って知名度向上を図ったりするケースが多いという。

 著名人も多く参加しており、カナダのジャスティン・トルドー首相、バラク・オバマ元米大統領、米政治家のヒラリー・クリントン氏、米Facebook COOのシェリル・サンドバーグ氏――など、そうそうたるメンバーが一般ユーザーと交流している。

 ディアンジェロCEOは「政界・ビジネス界の著名人は、Quoraを使うと一般的なSNSとは異なるユーザー層にリーチできると判断したようだ。Quoraでの回答が支持されると多くの人の目にとまるため、ブランディングにもつながっている」と説明する。

「日本にフィットすると考えた」

 日本では「Yahoo!知恵袋」などのQ&Aサービスがユーザーを獲得している。日本進出について、ディアンジェロCEOは「人口が多く、顧客基盤の拡大が期待できるためだ。日本は文化的に質が良いサービスを好む傾向があるため、高品質なQ&AサービスであるQuoraは日本にフィットすると考えた」と説明する。

photo Quora日本語版のスクリーンショット=プレスリリースより

 「英語版に登録する一部の日本人ユーザーを対象に、9月末から日本語版を試験的に提供したところ、質の高い回答が集まり、普及の手応えを得ている。広告モデルで収益を得るには時間がかかりそうだが、じっくりとサービスを育てていきたい」(ディアンジェロCEO)

 日本では、16年末にDeNAが運営していた医療系キュレーションメディア「WELQ」の記事を専門家が監修していなかった点が問題になったが、ディアンジェロCEOは「Quoraは、ユーザーのバックグラウンドが分かる点が最大の特徴だ。医療系の質問については、回答者の経歴・職歴などを正確性の判断材料にしてほしい」と話す。

 日本コミュニティ 責任者のフリーデンバーグ 桃紅氏は、「オープンな米国では、実名制にもかかわらず恋愛の質問も多い。日本語版ではどうなるか注目だ。日本でも著名な政治家やビジネスパーソンに参加してもらえるよう、今後精力的にアプローチしていきたい」と話している。

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