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» 2017年12月15日 07時00分 公開

杉山淳一の「週刊鉄道経済」:徳島県のDMV導入は「おもしろい」で突っ走れ!! (1/4)

JR北海道が開発し実用化できず、あまたのローカル鉄道が手を伸ばして撤退したDMV(デュアル・モード・ビークル)を、徳島県が実用化する。しかし現地に行ってみると「3年後に実現したい」という割には盛り上がっていない。

[杉山淳一,ITmedia]

 1月の本欄で、徳島県が本気でDMV(デュアル・モード・ビークル)の導入を検討していると紹介した(「『DMV』計画実現へ、徳島県はホンキだ」)。DMVは線路と道路の両方を走行可能な車両だ。当時は、DMVを実現させるため、2017年度予算に車両の製作費用を計上するという段階だった。

 この計画は2月に開催された阿佐東線DMV導入協議会で承認された。徳島県は約9740万円、高知県は1850万円を予算計上した。DMVを導入する阿佐海岸鉄道阿佐東線は、短いながらも徳島県と高知県をまたいでおり、高知県にとっても活性化させたい路線である。

 運行区間は再検討された結果、鉄道部分については阿波海南駅からとなった。阿佐東線の起点であり、JR牟岐線との接続駅となる海部駅は高架区間のため、地上にある阿波海南駅を選んだ。第1回協議会では牟岐駅からだったから、かなり短縮されている。

photo DMVの鉄道区間は、牟岐駅ではなく阿波海南駅が始発駅となった。1駅間だけJR牟岐線を利用する(出典:徳島県)

 道路部については甲浦駅付近の東洋町、海陽町周辺観光コースと、室戸岬を目指すコースが候補になっている。室戸岬はかなり遠いけれども、まずは「周遊観光」や「イベント利用」などの「観光用途」での運行を目指すというから、主要観光地の室戸岬は押さえておきたいと思われる。導入台数は3台だから、室戸岬まで行ってしまうと、運行回数は少なくなる。また、地域輸送としての路線バス的な運行は今後の検討課題となった。

photo DMVの道路区間は最長で室戸岬だ。観光地としては集客力が高い。しかし運用距離の長さが運行回数減につながらないか心配になる(出典:徳島県)

 つまり、阿佐東線DMV導入について、当面は「観光用途」重視である。これは第1回協議会の資料から読み取った状況と変わらない。概算事業費は車両制作費で約3億6000万円、駅舎改築費用で約2億8000万円。信号設備の整備で約3億6000万円。合計約10億円となった。沿線自治体にとっては大金であろうが、このところ都市部の新線計画で100億〜1000億円単位のプロジェクトを見てきたから、10億円で新しいことを始められるなら安いな、なんて思ってしまう。

 報道を追うと、7月から試乗や展示会を行っているようだ。8月はエンジントラブルで運行停止という報道もある。9月には阿佐海岸鉄道が運転士を募集した。鉄道運転士の高齢化を見越したというけれど、将来のDMVの運行に備えて、バスも運転できる運転士を採用、養成する考えだ。

 DMVは北海道の日高本線でも検討課題になっており、総額は約50億円となっている。距離が長くて、改良すべき駅や車両の数も多いからだろうか。それに比べて徳島・高知のDMVは安い。しかし、10億円は大金だ。地域交通ではなく観光用途の乗りものに10億円。これには否定的な意見もあるらしい。当然だ。DMVが自分の暮らしを便利にしてくれるとは想像しがたいからだ。

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