インタビュー
» 2017年12月27日 08時00分 公開

川上徹也さんに聞く:ヒットを生み出すには何が必要なのか V字回復した会社の“熱” (1/3)

「お客さんの数がどんどん減っていて、困っている」といった悩みを抱えている人が多い。人気、売り上げがどんどん落ち込んでいくところがある一方で、どこかで底を打ち、そこから上昇していくところもある。いわゆるV字回復できた会社とそうでない会社にどのような違いがあるのだろうか。

[行列研究所,ITmedia]

お知らせ:

本記事は、書籍『バカ売れ法則大全』(行列研究所/SBクリエイティブ)の中から一部抜粋し、転載したものです。


 「お客さんの数がどんどん減っていて、困っている」「売り上げの減少に歯止めがかからないといった悩みを抱えている人も多い。人気、売り上げがどんどん落ち込んでいくところがある一方で、どこかで底を打ち、そこから上昇していくところもある。いわゆるV字回復できた会社とそうでない会社にどのような違いがあるのだろうか。

 『1行バカ売れ』(角川新書)『売れないものを売る方法? そんなものがほんとにあるなら教えてください!』(SB新書)の著者で、コピーライターの川上徹也さんに聞いたところ「おもしろい工夫をして、たくさん人が来ても、商品を売っているところが面白くなければダメ。つなげることが大切だ」という。商品を売っているところが面白くなければいけない? つなげることが大切? どういう意味なのか、話を聞いた。

ITmedia ビジネスオンラインの人気連載を収録した『バカ売れ法則大全

『若旦那図鑑』で人を呼び寄せた土湯温泉

行列: 何らかの影響を受けて、業績が低迷する会社があります。さらに沈んでいく会社もあれば、浮上する会社もあります。両社にどのような「違い」があるのでしょうか。

川上: 業績が低迷している時にそのまま諦めてしまうのか、何とかしようと立ち上がるのかが大きな違いだと思います。まず何かを始める。それによって「熱」が生まれ「物語」が始まる可能性がでてきます。例えば、福島県にある土湯温泉をご存じでしょうか。福島県市の西のはずれにある山に囲まれた小さな温泉地です。歴史は古く地元では有名な温泉地でしたが、東日本大震災の影響による風評被害で、訪れる観光客が激減し、旅館16軒のうち6軒が廃業や休業に追い込まれました。こうした状況に対して、土湯温泉はどうしたか。「若旦那」を売り出すことに決めたのです。

 温泉地の旅館といえば「女将」を想像される人が多いのではないでしょうか。しかし、土湯温泉の場合、若旦那が立ち上がりました。観光客が減少しているなかで、このまま指をくわえて黙っているわけにはいきません。福島学院大学短期大学部の学生と連携して、5つの旅館の若旦那を取り上げたフリーペーパー『若旦那図鑑』を発行しました。

 驚くのはその内容です。「あなたにぴったりの若旦那は? 適性診断チャート」「若旦那と妄想デート!」といった形で、彼らをまるでアイドルのように取り上げています。『若旦那図鑑』はSNS上でも話題になって、さまざまなコメントがつきました。最初は5人からスタートした企画ですが、その後、福島県の違う温泉地にも広がり、若旦那の数も増えていきました。また、カフェをオープンしたり、グッズを販売したり、漫画化になったりすることで、土湯温泉の観光客は少しずつですが回復していきました。

『若旦那図鑑』は漫画にもなった

行列: 「温泉街にお客さんをたくさん呼ぼう」となると、自然、食事、温泉をアピールするところが多い。でも、土湯温泉はほかのところがやっていないことに目をつけたわけですね。

川上: その通りです。全国に温泉街はたくさんあって、その多くは「お湯がいい」「景色がいい」「料理がおいしい」「お湯がいい」といったことを訴求しています。しかしそんなアピールでは、誰も注目しません。お客さんから見るとどこも同じで区別がつかないからです。その中で、土湯温泉は若旦那にエンターテインメント色の強い付加価値を与えたことによって、全国から注目されつつあるのです。

 しかし、ただ注目を集めるだけではダメなんです。土湯温泉でいうと『若旦那図鑑』に連動するような「面白さ」が温泉街にないと、せっかく「面白そう」と思って来たお客さんもがっかりしてしまいます。これでは口コミも広がっていきません。2016年秋、土湯温泉に「若旦那BAR」がオープンしました。これは若旦那たちが日替わりでマスターになって、カクテルや手料理を提供する「ここにしかないBAR」です。それまで夜遅くなるとほとんどの飲食店が閉店し、通りが寂しくなっていた夜の温泉街を少しでも楽しんでもらうおうという思いでつくられました。このように現地に行っても「面白かった」と思ってもらえるような試みが重要なのです。

行列: 土湯温泉は、人を呼ぶことにチカラを入れただけでなく、受け皿にもチカラを入れたわけですね。

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