「沖縄県が観光収入を過大発表」というフェイクニュースはなぜ生まれたかスピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2018年01月09日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

 2018年も「愛国」と「反基地」のののしり合いから始まってしまった。

 おとそ気分も冷めやらぬ1月4日、産経新聞が「沖縄県が観光収入を過大発表 基地の恩恵少なく見せ、反米に利用か」というニュースを配信したことが、一部から「フェイクニュース」と叩かれている。

 なんてことを言うと、百田尚樹さんやケント・ギルバートさんの熱心な信者のみなさんから、「数字の改ざんはサヨクの常とう手段だ! そっちこそデマを広めるな!」なんて怒声が聞こえてきそうだが、そういうイデオロギー的な思想を持ち合わせていない人間が見ても、このニュースはかなりビミョーである。

 産経新聞が、「反米に利用」と問題視して取り上げているのは、3年前の県民経済計算にくっついている「参考資料」のなかの1カ所に過ぎず、しかもそれは県統計課が、ちゃんとした県民経済計算とは別モノなので、「ご利用にあたってはご注意ください」と断りまで入れてあるものだからだ。

 平成26年度県民経済計算の参考資料のなかにある「県外受取の推移」というファイルをみると、観光収入に経費などの中間投入額を計上したまま算定した5341億7200万円の少し下に、「米軍基地からの要素所得」として、1519億8300万円という数字がある。

 この収入と所得の比較をオフィシャルな数字として沖縄県が用いて、「ホラホラ、沖縄は基地じゃなくて観光でガッツリ食っているんですよ」とドヤ顔でアピールしていたというのなら確かに「過大発表」であり、翁長知事の首がすっ飛んでもおかしくないが、欄外には「観光収入は、沖縄県観光政策課による公表値を参考掲載している」とちゃんと注釈も付けられている。

 つまり、正規の県民経済計算ではないので当然、これまで沖縄県が世の中に発表してきた県民総所得やら、そこに占める基地関連収入の比率などまったく変わらないのだ。

産経新聞が配信した記事は「フェイクニュース」だったのか
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