JR信越線で「15時間立ち往生」は、誰も悪くない杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/5 ページ)

» 2018年01月19日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 1月11日、JR東日本の信越本線で、新潟県三条市の東光寺駅を発車した列車が、積雪のため次の帯織駅にたどり着けず、ほぼ中間地点で立ち往生した。結果として、約430人の乗客が最大15時間半にわたって車内に閉じ込められた。大変な災難だったと思うけれど、1人も死者が出なかったことは救いだ。体調を崩されて救急搬送された方が5人、その他にも心身ともにつらい思いをされた方も多いだろう。

photo 積雪のため列車が立ち往生。未曽有の雪害だった(写真は記事と関係ありません)

 JR東日本に対する批判も多い一方で、現場の職員の奮闘ぶりを称賛する声も多い。本件に対する関わり方によって立場も見解も変わるだろうから、何が間違いで、何が正しいかは断定できない。私の率直な感想を述べれば、当事者の誰にも悪意がなかった。ただただ不幸な災害であった。そう、これは災害である。津波や地震のように捉える案件だ。

 雪害は厄介だ。薬と同じで、ほどほどの量なら役に立つけれど、量が多いと命を奪うほど怖い。雪の少ない地域の人々は、雪に対して楽しいものというイメージが強い。童謡「雪(ゆきやこんこ……)」や、スキー、かまくら、雪だるまなどを連想するからだ。雪と仲良く付き合ってきたという気分がある。

 しかし、大雪は深刻だ。雪国は毎年のように死者が出る。雪の少ない東京にいて、重要な意志決定に関わる人は、庶民と同じ感覚で雪を捉えてはいけない。今回は新潟だけど、北国の住環境、交通環境はとても厳しい。省庁移転が時々話題になるけれど、国土交通省はいっそ旭川あたりに移転すべきではないかと私は思う。

 信越線立ち往生について、JR東日本、沿線自治体に責任を問う部分もあるかもしれない。しかし、まずは、次の災害への備え、ルール作りを急ぐべきだ。何しろ、冬はまだ終わっていない。悪者探しをしている場合ではない。これは災害だ。悪者はいなかった。

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