“プロインタビュアー”が伝授する、「深い話」を聞くための職人技「聞き出す力」

» 2018年02月05日 06時30分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]
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 “プロインタビュアー”を名乗り、芸能人やスポーツ選手、政治家などの素顔に迫る書籍を世に出し続けている文筆家・吉田豪さん。吉田さんはなぜ海千山千の猛者たちの懐に飛び込み、世間が全く知らないエピソードを聞き出すことができるのだろうか。

 吉田さんが取材ノウハウをまとめた著書「聞き出す力」(日本文芸社、税別800円)によると、その秘訣(ひけつ)は「徹底的に下調べをすること」。それが難しい場合は「相手の良い所を探して好きになり、心から興味を持って聞く」「良い答えが返ってきたら、ちゃんとしたリアクションで返す」といった手法を使うという。

 例えば、元バドミントン選手の潮田玲子さんを取材した際、吉田さんは競技の知識は全くなかったが、潮田さんが「恋愛しているから勝てない」「人気に実力が追い付いていない」と世間から批判された体験に感情移入。話を聞く中で、「見返そうと努力したが、五輪でメダルを取れなかった」という人間ドラマをうまく引き出すことに成功した。

photo 吉田豪さん著「聞き出す力」(日本文芸社、税別800円)

 一方、良い話が聞けなかった場合は「あえて無言になることで相手にプレッシャーを与え、話の続きを強引に聞く」こともあるとしている。その際は、不敵な笑みも浮かべるとのこと。

 そうすると、取材相手は「“プロインタビュアー”を名乗るほどの男。きっと全てお見通しなのだろう」と感じ、本当は何も知らない吉田さんに赤裸々なカミングアウトをしてくれるという。「肩書はそのための武器。取りあえず堂々としていれば意外と何とかなる」そうだ。

 この“無言の訴え”は、タレントのさとう珠緒さん、お笑い芸人の品川祐さん、漫画「北斗の拳」原作者の武論尊さんなどそうそうたるメンバーに駆使したという。品川さんからは後日、ラジオで「リアクションが悪かった」といわれてしまったそうだが……。

 ただ、吉田さんによると、相手によっては「自分のハードルを下げる」ことも重要。同著には、編集者が取材依頼のメールに「あなたよりもあなたに詳しい人が取材します」と書いた結果、大御所女優から取材時に「まだ私の知らない話は出てこないけど?」と“塩対応”を続けられ、泣きそうになったという失敗談も掲載されている。

 このほか、同著には「どうしても相手に興味が持てない場合は愚痴を聞く」などのワザも紹介されている。人と話す機会が多いビジネスパーソンや、プライベートでの対人関係を磨きたい人の助けになりそうな1冊だ。

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