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» 2018年02月21日 06時30分 公開

小売・流通アナリストの視点:アマゾン・ゴーの出現は既存小売にとってピンチなのか? (1/4)

レジのないコンビニ「アマゾン・ゴー」が一般客向けにオープンした。利便性が高いなどと評判が良いが、一方で既存の小売業にとっては脅威になるのは事実だ。ただ、すべてが取って代わられるかと言えば、決してそうとも言い難い。

[中井彰人,ITmedia]

 定点観測も兼ねて、カミさんの休日の買い物には積極的に付き合うようにしているのだが、食品まわりの買い物となると、彼女の選択は自宅から少し離れた「オーケーストア」の店舗となることが多い。

 ナショナルブランド品の値引き幅を明示しているこの店は、主婦にとってコスパで納得感のある買い物ができるらしく、バスケット価格でも実際安くなることを体験的に感じて、支持しているようだ。実際、こうした感覚を持っている消費者は多いようで、土日の午後の時間帯に行ってしまうと、相当ごった返している。その上、こうした人気店はまとめ買いする人が多く、皆が大型カートを押して動き回っているので、衝突しないように買い物するのも一苦労といった感じになる。

 そんな状況で買い物を終えると、最後の難関レジ並びが待っているのだが、毎回結構な苦痛を伴う。くだらないことだが、どこのレジが最短かという選択に頭を使い、外れるとがっかりしたりする。レジ待ちの時間が長くて、駐車場の無料時間をオーバーしないかと心配になるときもあるくらいだ(セコい考えだが)。

 これでも、昔と比べれば、だいぶ改善はされている。若い読者の方は記憶にないかもしれないが、バーコード対応のレジがない時代は、値札を見て手で価格を入力していたし、オートキャッシャーもないので、レジの処理は一種の職人芸であり、レジ担当の熟練度でその処理スピードには雲泥の差があったものだ。こんなことを書いていると、何年か前にお会いしたスーパー黎明期の創業者の方が、「最近の子は、自分の店の商品価格も頭に入ってないんだよね、昔は値札を見なくてもレジを打てたものだけど……」などと仰っていたのを思い出す。

 こうした達人の時代から比べれば、かなりオペレーションが標準化され、平均的処理速度も向上したのは確かだ。最近では、セルフレジやセミセルフレジも当たり前に普及しつつあり、何よりも人員確保がひっ迫してきていることから、各社のレジ効率化への取り組みは、相当本気度を増していることは間違いない。

アマゾン・ゴーの可能性

 なぜこんな書き出しになったかといえば、「Amazon Go(アマゾン・ゴー) 一般客向けにオープン」というニュースが発端だ。

話題の「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」(出典:Amazon) 話題の「Amazon Go(アマゾン・ゴー)」(出典:Amazon)

 このニュースは、新聞やテレビでも大きく取り上げられ話題となった。以前から、リリースされていたこのレジのないリアル店舗は、レジ待ちという苦痛から消費者を解放するという画期的な店であり、注目を集めていた。「アマゾン・ゴーに行ってみた」といった類の記事も諸々出たが、聞く限りかなり利便性が高く、うわさにたがわぬ仕上がりになっているようだ。

 この店はアマゾンが運営する、いわゆる無人コンビニ(に類するもの)であり、専用アプリをダウンロードし、スマートフォンにQRコードを表示してゲートにかざして入場したら、自由に自分のバッグに入れて出ていけばいい。QRコードと画像認識によって、個人別の購買行動はすべて認識され、持って出た商品の代金がクレジットカードから決済され、棚に戻した商品は課金されない。あの煩わしいレジ処理なしでの買い物が、現実のものとなったのである。

 日本でも人工知能(AI)を活用して似たような実験がコンビニで行われているし、店舗無人化への取り組みはさまざまある。中国では、アマゾン・ゴーの一般公開3週間前に、商品に取り付けた無線タグを利用して自動決済する無人店舗のスーパーマーケットがオープンした。技術革新によって、レジなしでの買い物を実現するインフラは既に出そろっている。影響力のあるアマゾンの無人コンビニの導入は、各国における店舗のイノベーションを一気に後押ししてくれることになるだろう。われわれがレジ待ちのストレスから解放されるのもそう遠くないかもしれない。

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