KDDIがヘルスケア事業に参入 医療用SNSの普及支援日本エンブレースに出資

» 2018年03月07日 19時29分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 KDDIは3月7日、医療用SNS「メディカルケアステーション(MCS)」を展開する日本エンブレース(東京・港区)と資本・業務提携を締結し、ヘルスケア事業に参入すると発表した。出資額は非公開。通信サービス以外の「ライフデザイン事業」を強化してビジネスの幅を広げる戦略の一環で、MCSのマーケティングや企画・設計を担っていく。

photo 日本エンブレースの伊東学社長(=左)、KDDIの岩崎担当部長(=右)

KDDIが出資する「日本エンブレース」とは?

 日本エンブレースは2003年に創業後、ITを活用して医療・介護従事者をサポートする事業に取り組んでいる。KDDIが支援するMCSは13年にリリースしたSNSで、(1)医師・薬剤師・介護士など異なる医療機関に属するスタッフ間の情報共有、(2)医療従事者と患者のコミュニケーション――の2つの用途に対応する点が特徴。医療機関・患者は無料で利用できる。

 医療機関スタッフ向けのモードでは、チャット形式での会話や、画像ファイルの送受信などが可能。患者とのコミュニケーションモードでは、患者とその家族が、その日の体調や悩みのほか、服薬状況などを医療従事者に共有できる。

photo 患者との対話画面

 現在の医療機関では、同一の患者が病院・介護施設・リハビリ施設など複数の施設に通いながら治療を行う際、各施設のスタッフがメールや電話、FAXによって情報を共有するのが一般的だが、MCSはこうしたやりとりで生じる時間を削減できるという。こうした仕組みが評価され、全国に存在する891団体の医師会のうち、207団体が正式に導入済みだ。

photo 医療スタッフ同士の対話画面

KDDIはどんな支援をする?

 KDDIは今後、生命保険会社などにMCSを訴求し、パートナー契約の獲得を目指す。生保会社の顧客が医療機関に通院している場合、MCSに入力された服薬・食事・運動などのデータを提供することで、保険料の算出をサポートする案などを検討中という。

 またKDDIは、地方自治体や健康保険組合と提携し、スマートフォン上で健康状態や生活改善方法を専門家に相談できる簡易医療サービス「スマホdeドック」を既に展開している。同事業で得た地方自治体とのコネクションを生かし、地域医師会などへの訴求も図っていく。

 在宅医療、重症化予防、高齢者支援、子育て支援――など、MCSを活用した多様なチーム医療サービスの企画・立案も並行して進める。

photo KDDIが果たす役割

 KDDI バリュー事業本部 担当部長の岩崎昭夫氏は、「MCSを多数の医師会に導入した実績がある点を評価して日本エンブレースとの資本・業務提携を決めた。MCSは時間と場所の制限を超えて多くの職種がやりとりできるサービスだ。ゆくゆくは海外展開も視野に入れている」と展望を語った。

 日本エンブレースの伊東学社長は「MCSを単なる医療インフラだけでなく、社会インフラにしたいと考え、KDDIと数カ月にわたって話し合ってきた。今後はMCSと他社のヘルスケアアプリの連携も強化し、ITを活用した医療・介護分野のエコシステムを作っていきたい」と期待を込めた。

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