上陸から半年 「スマートスピーカ―」は日本市場に定着したのか“恥ずかしがる人”はいない

» 2018年04月03日 17時02分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 「上陸当初は『日本人がスマートスピーカーに話しかけるのを恥ずかしがり、あまり使われないのでは』との懸念もあったが、現時点でそうした現象はみられない」――アクセンチュアの中村健太郎 戦略コンサルティング本部マネジングディレクターが説明するのは、こんな“意外”な実態だ。

 米Googleの「Google Home」や米Amazon.comの「Amazon Echo」シリーズなどが相次いで日本上陸してから約半年。どう受け入れられているのか。

photo 米Amazon.comの「Amazon Echo」シリーズ

日本での普及率は8%

 アクセンチュアが4月3日発表した、デジタル機器に関する世界各国の市場動向などをまとめた「2018デジタル消費者調査」。日本、インド、米国、中国など19カ国におけるスマートスピーカ―の普及度を明らかにした。

 調査によると、17年時点での日本におけるスマートスピーカー普及率は8%で、19カ国中12位。「18年中に買う」と考えている人の割合は16%で17位だった。だが中村氏は「この数値は、イノベーティブな新製品が世に出る際にネックとなる『キャズム』を超えている」と分析。

 「スマートスピーカ―は間違いなく日本市場に普及しつつある。18年は新しいモノ好きだけでなく、一般層への普及も予想される」(中村氏、以下同)という。

 中村氏はなぜ、ここまでスマートスピーカーの普及を確信しているのだろうか。

photo アクセンチュアによる調査結果

スマートスピーカーのユーザーは、スマホの利用頻度が下がる

 その理由の1つが、調査で「スマートスピーカー保有者は、家庭におけるスマートフォン利用頻度が下がる」――という傾向がみられたことだ。頻度が下がった分野は(1)音楽などのエンターテインメント、(2)ショッピング、(3)Web検索――の3領域。

 中村氏は「搭載するAI(人工知能)がユーザーとの会話データや購買データを学習するため、『今の気分に合った音楽を流して』『先週行ったレストランをもう一度予約して』という要求に応えられる点を魅力に感じ、スマホからの切り替えが進んでいるようだ」と説明。

photo アクセンチュアによる調査結果

 「長めのテキストを入力するより口頭で伝えた方が簡単なため、単語数が多い検索もスマートスピーカーに置き換えられている。スマートスピーカーは、顧客との新たなデジタル接点になる可能性を秘めているため、今後の利用増が期待できる」という。

スマートスピーカーに飽きるユーザーは少数派

 さらに日本では、スマートスピーカーに飽きるユーザーが少ないことも判明。所有者の44%が「毎日使っている」、36%が「週に数回使っている」と回答した一方、「月1回以下しか使わない」人は8%にとどまり、“家でほこりを被っている”層は少数派であることが分かった。

 中村氏は「所有者の使用頻度の高さは大きなポイント。冷やかし半分で買った人の日常生活にも浸透している。核家族・単独世帯を問わず広がっているバランスの良さからも、さらに普及すると判断した」という。

photo アクセンチュアの中村健太郎 戦略コンサルティング本部マネジングディレクター

 調査では、日本のユーザーはスピーカーを選ぶ際、発話速度や音質などのスペックよりも対話内容を重視し、より個人の性格に応じた会話ができる製品を買うとのデータも出たという。

 中村氏は「現在は『Google Home』『Amazon Echo』が人気だが、日本企業が新規参入した場合でも勝算はある。ユーザーのデータを効率よく取得し、AIの対話に応用する技術を持つ企業がスマートスピーカーを開発すれば、大企業のシェアを奪える可能性もある」と話している。

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