AI(人工知能)向けのアプリ開発を担うヘッドウォータースは3月19日、ロイヤルダイニングが運営する居酒屋「天空の月 渋谷店」(東京都渋谷区)で、米Amazon.comのスマートスピーカー「Amazon Echo Dot」を用いた接客の実証実験を始めた。顧客は口頭でのドリンク類の注文などが可能で、スタッフの負担軽減とガジェット好きの獲得などが主な狙い。
実験期間は約1週間。期間中は音声の誤認識を防ぐため、比較的静かな半個室の1部屋を「Alexa オーダー席」に転換する。座席にはタブレットや呼び鈴の代わりに、同スピーカー1台を設置する。ドリンク類の注文のほか、お勧め商品を聞いたり、店員を呼び出したり、お会計を依頼したり――といったことも可能だが、現時点ではビールとフード類の注文には対応しておらず、店員を呼んだ際に直接伝える必要がある。
顧客は「Alexa、飲み物メニューを開いて」または「アプリを開いて」と話しかけることで、Amazon Echo Dotを起動できる。注文できるドリンクは、ビールを除くサワーやハイボールなど、既存メニューの6割程度。顧客の滑舌やくせによる聞き取りミスを防ぐため、各メニューに番号を割り振り、「サワーの5番をお願い」などと伝える仕組みとした。
「Alexa」などの単語を頻繫に発さない限り、Amazon Echo Dotが誤作動しないことは事前に確認済み。注文内容の認識精度は高く、「やっぱりやめた」「やっぱりハイボール2番をもう1つ」――といった柔軟なオーダーにも対応できるという。受注後は、店員がドリンクを席まで届ける流れ。
嫌がらせ行為などを防ぐため、注文内容は店員用端末のチャット上に表示する。問題があると判断した場合は店員が直接対応し、トラブルを防ぐ。
Amazon Echo Dotを用いた接客をテストする理由について、ヘッドウォータースの担当者は「“会話できる”という親しみやすさを生かした接客で、売り上げをどの程度伸ばせるか検証したいと考えたため」と説明。
「一般的な接客ツールであるタブレットは、仕組みを作り込んでから導入するため、なかなか仕様を変更できない。一方、スマートスピーカーでは売り上げ状況に応じて別の商品をおすすめしたり、話す内容を変更したりと、接客方法を柔軟に調整できる点が魅力だ」という。
「注文できるドリンクからいったんビールを外し、他のものをお勧めするよう設定した理由もそこにある。店舗の業績を上げるためには、原価率の低いビールよりもハイボールなどを頼んでもらった方が効果的だからだ」(同)
仮に顧客がビールを頼んだ場合、スピーカーは「申し訳ありません。ビールは苦手なので……」などとしおらしく謝るという。他にも、店員を呼んで欲しいと頼むと「店員さーん、店員さーん」と呼び掛けるなど、Amazon Echo Dotに性格を持たせている点も特徴だ(実際は音声ではなく、システム上で店員を呼んでいる)。
数あるスマートスピーカーからこの端末を選んだ理由については、「コストが安く、店舗の業績を圧迫しないと判断したため。比較的小型で、テーブルの上に置いても邪魔にならない点も評価した」とする。
ヘッドウォータースの担当者は「利便性ではタブレットに敵わない面もあるが、キャラクター性が高いというスマートスピーカーならではの強みを最大限生かしたい。実験で良い成果が得られれば、対応メニューや会話のレパートリーを増やし、複数台の導入や他店舗への展開に踏み切りたい」と話している。
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