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ヤン・ウェンリーが込めた思い 組織のためではなく、自分のために働け銀河英雄伝説からビジネスリーダーは何を学ぶべきか?(1/3 ページ)

» 2018年06月01日 06時45分 公開
[阿部圭司ITmedia]

 私はリスティング広告やFacebook広告などを筆頭とする運用型広告を専門に取り扱う、40人強の中小企業の経営者です。

 他の資本には頼らず、下請け案件などもない、業界では一風変わった組織形態を維持しつつ、創業以来、毎年2ケタ成長、黒字経営を続けてきました。もちろん、必ずしも黒字経営が褒められたものではないということも理解しつつ、今はさらなる事業成長に向けた打開策に追われている最中です。

 そんな経営者、リーダーとして志半ばの私の戦略構築や組織論の大本は、さまざまな時代の軍事関連がベースになっています。とりわけ、その中でも最も参考になったと感じているのが「銀河英雄伝説」です。

 銀河英雄伝説は田中芳樹さんによるSF小説で、1988年から2000年にかけてアニメシリーズも放送されました。銀河英雄伝説をご存じない方のために、公式サイトに書かれているストーリーを以下に一部引用します。

数千年後の未来、宇宙空間に進出した人類は、銀河帝国と、自由惑星同盟という“専制政治”と“民主主義”という2つの異なる政治体制を持つ二国に分かれた。長らく戦争を続ける両国家。銀河帝国は門閥貴族社会による腐敗が、自由惑星同盟では民主主義の弊害とも言える衆愚政治が両国家を蝕んでいた。

宇宙歴8世紀末、ふたりの天才の登場によって歴史は動く。「常勝の天才」ラインハルト・フォン・ローエングラムと、「不敗の魔術師」ヤン・ウェンリーである。ふたりは帝国軍と同盟軍を率い、何度となく激突する。

 以前から銀河英雄伝説は熱狂的なファンが多いことに加え、2018年4月から「銀河英雄伝説 Die Neue These」というリメイク版アニメが始まったことなどにより、再度脚光を浴びているのです。

現在放送中の「銀河英雄伝説 Die Neue These」(出典:公式サイト) 現在放送中の「銀河英雄伝説 Die Neue These」(出典:公式サイト

 そんな中、ITmedia ビジネスオンラインの編集者から「銀河英雄伝説を題材にしたビジネスコラムを書いてほしい」と私に白羽の矢が立ちました。

 そこで私の経験を基に、後ろ盾のない、小規模な戦い方、つまり局地戦での圧倒的な勝利を目指すビジネスリーダーや経営者の方々に向けて書いていこうと思います。はっきり言って大企業、いわゆる年商100億円規模以上のようなビジネス向けの話ではありません。

 この連載コラムでは、銀河英雄伝説の登場人物の名言を引き合いに出し、現代風にどう組織に落とし込んでいくか、落とし込んできたのかを可能な限り解像度を高めて書いていきます。初回は銀河英雄伝説の主要な登場人物であり、「自由惑星同盟」側の主人公に当たるヤン・ウェンリーの名言に焦点を当てます。

国家ではなく個人

 「司令官のヤン・ウェンリーだ。皆そのまま聞いてほしい。まもなく戦いが始まる。ろくでもない戦いだが、それだけに勝たなくては意味がない。勝つための算段はしてあるから無理をせず気楽にやってくれ。かかっているのはたかだか国家の存亡だ。個人の自由と権利に比べれば大した価値のあるものじゃない。それでは、皆そろそろ始めるとしようか」

 これは自由惑星同盟の首都星であるハイネセンで軍事クーデターが勃発し、同盟軍艦隊同士が戦ったドーリア星域会戦での1コマです。同盟軍同士の戦いであるが故に、ヤン・ウェンリーは「ろくでもない戦い」と表現し、その上で「勝たなくては意味がない」としています。

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