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パソナ「淡路島移転」はどうなった? 3人のシングルマザーが語った「仕事」「教育」「島民の気質」長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/5 ページ)

» 2024年01月26日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 パソナグループが2020年9月に表明した、東京都心部の大手町から兵庫県・淡路島への本社機能の一部移転が起爆剤となって、淡路島が活性化している。

 同社は24年5月までに本社勤務社員の3分の2に当たる約1200人が淡路島に転勤する体制を目指し、島内にオフィスや社員寮を整備してきた。代表の南部靖之氏も淡路島に移住し、ワーケーションを実践。島内のオフィスに通勤している。23年5月には約1050人が淡路島で働いており、目標の9割近くに到達した。同社広報によれば「社内でも淡路島へ移住した人たちからの評判を聞いて、移住を希望する人が増えている」とのことだ。

淡路島に本社機能の一部を移転したパソナの今を取材した。写真は「パソナワーケーションハブ志筑」

 パソナグループは、さらに進んだ取り組みに挑戦している。自然に恵まれた淡路島で伸び伸びと子どもたちが育つように、シングルマザーの支援、インターナショナルスクールの誘致など、子育て環境の整備にも取り組んでいる。そればかりではなく、同社は淡路島に観光客を呼び込む、テーマパーク、飲食店、観光物販店、ホテルを多数経営して、過疎化が止まらなかった島内ににぎわいを創出。コロナ禍で仕事がなくなった音楽家やレストランのシェフたちに、パソナが経営する施設で働く場をも提供して喜ばれている。同社は淡路島での取り組みの成果を各地に拡散し、第2、第3の地方創生に取り組む計画を打ち出している。

パソナワーケーションハブ志筑が入居するイオン淡路店
3階をまるごと改装し、オフィスとした

 現在、主に事業展開しているのは北部の淡路市である。淡路島は北から、淡路市、洲本市、南あわじ市と3つの市で構成されており、明石海峡大橋を往来する高速バスで、神戸市内の高速舞子バス停から、淡路市の玄関口である淡路ICバス停前までわずか約7分。神戸の繁華街、三宮からも40分弱でアクセスできる。

 淡路市は05年、津名郡の津名・淡路・北淡・一宮・東浦の5町が合併して誕生した。23年4月1日時点で人口は約4万2000人だが、過疎により合併前から大幅な人口減が続いてきた。国勢調査によれば、00年には約5万2000人の人口があったので、当時より2割も減っている。

 ところが、20年には転入者が転出者を上回る「社会増」に初めて転じた。同年の転入は兵庫県の推計で1321人。それに対して転出は1252人で、69人の増加だった。以来、21年は139人増、22年は313人増と、社会増が続いている。パソナグループをはじめとする企業誘致の成果が出たと淡路市役所は喜んでいるようだ。今や淡路市内に30社以上が新しく事業所を置いているという。

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