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「民泊2020年問題」勃発 揺らぐ「観光立国」ニッポン「民泊新法」施行直前も届け出わずか724件(2/5 ページ)

» 2018年06月04日 07時00分 公開
[中西享ITmedia]

東京五輪で見込まれる20万件の新規需要

 東京五輪では、1日当たり約100万人の外国人観光客が訪問すると予想され、ピーク時には200万人になるという予測もある。このうち、15〜20%が民泊を利用するのではないかとみられ、1日15万〜40万人が宿泊する。2人で1部屋に泊まるとすると、東京五輪で7.5万〜20万室の新規需要が生まれる計算になる。

 東京ではインバウンドを当て込んでホテルが相次いで建設されている。だが、冒頭で紹介した通り、これまで違法民泊で事業を展開してきた民泊業者の中には、新法施行による規制強化で撤退する者も出ている。民泊登録が予想外に進まないとなると、外国人観光客にとっては宿泊先探しに苦労することになる。観光産業を育成しようとする日本にとってもマイナスだ。

phot エアビーでは6月15日以降、届け出番号がない物件は掲載されなくなってしまう(写真はエアビー・ジャパンの田邊泰之社長)

 世界最大の民泊宿泊サイトを運営している米Airbnb(エアビーアンドビー、以下エアビー)の日本法人であるAirbnb Japan(以下、エアビー・ジャパン)の田邊泰之社長は、3月14日の記者会見ではホスト数の増加に期待を示していた。しかし、自治体の申請窓口への申請件数が伸び悩んでいる状況からみて、新法が始まる6月15日時点では、合法民泊の物件数は大幅に少ない数字になりそうだ。

 エアビー・ジャパンのWebサイトによると、新法施行以降は、「届出番号等の記載のないリスティングは、手続きが完了するまでの間、非掲載」にするとしており、届出のない物件は、宿泊者が利用できなくなってしまう。5月21日の段階で、田邊社長は申請件数の低迷について「(登録が増えるよう)できるだけ多くサポートしていきたい」とだけ述べた。

「週末以外は認めない」 相次ぐ自治体の「締め出し条例」

 営業日数を最大180日に限定するなど厳しい規制を盛り込んだ新法と、これを受けた地方自治体がさらに厳しい「上乗せ条例」を制定したことで、民泊事業は大幅に制限されることになっている。中でも東京五輪で民泊の利用が予想される東京都は多くの区で厳しい条例が定められた。

 東京都の多くの自治体が、3月の定例議会で民泊を規制する条例を相次いで成立させた。代表的なのは「月曜日の正午から金曜日の正午までは認めない」という条例で、事実上、週末の宿泊以外は認めていない。新宿区や練馬区では、「『住宅専用区域では』月曜正午から金曜正午まで禁止」という条件を付けている。一方、中央区では全区域でこの制限を課し、最も厳しく規制している。

 こうした条例ができるのを予想して、都心部のマンションでは2〜3月にかけて多くのマンションが臨時総会を開催。マンション管理組合規約の中に「当マンションでは民泊は禁止する」という規約を盛り込む動きが加速した。居住者は、民泊に利用されることでマンションの不動産価値が低下するとして反対の姿勢を強めている。このため、禁止規定のあるマンションでは、ホスト側がマンションを民泊に利用する自由度が狭まっている。

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