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「民泊2020年問題」勃発 揺らぐ「観光立国」ニッポン「民泊新法」施行直前も届け出わずか724件(3/5 ページ)

» 2018年06月04日 07時00分 公開
[中西享ITmedia]

大阪に京都 全国で規制強化の動きが加速

 規制強化の動きは全国の自治体にも広がった。大阪市では、ホテルや旅館が営業できない「住居専用地域」の場合、幅4メートル以上の道路に面していない地域は民泊を全面的に営業禁止とし、小学校周辺の100メートル以内では、事実上、週末以外の営業を禁止した。

 日本最大の観光地である京都市でも、一部例外を設けたものの、住居専用地域での民泊営業を観光閑散期の1月15日から3月15日までに制限した。春夏秋のシーズンになると京都には内外から観光客が殺到して、地域住民の生活に影響を与える「観光公害」が大きな問題になっている。それだけに、さらなる観光客を呼び込む民泊には懸念の声が集まっている。

phot 京都市は「観光公害」を懸念して厳しい上乗せルールを制定した(京都市公式Webサイトより)

 全国の旅館、ホテルの業界団体である全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)の多田計介会長は「70%の県で上乗せ条例ができ、想像を超えた良い結果になっている」と語る。ただ、仮に週末しか民泊が認められないとなると、年間では100日程度しか営業できなくなり、民泊新法で規定している上限の180日よりも大幅に制限される。そうなると、民泊事業者にとっては事実上、営業することが難しくなる。

phot 民泊新法に対しては歓迎する立場だ(全旅連の多田計介会長)

 一方、渋谷区役所の豊田理香生活衛生課長は「地域の活性化につながる民泊は良い部分もあるので、一律に規制するのではなく、慎重に対応する。未登録の違法な民泊はホットライン(電話)を新設して区民からの通報を受け付け、区が指導に乗り出す。生活衛生課員を臨時に増やして監視を強化する」と話す。

 ただ、「違法民泊」を見つけるのが難しいのも事実だ。マンションのオーナーが転貸していたり、住所が分かりにくかったりで、なかなかオーナーにたどり着けない。また、オーナーが外国人だったり、海外の仲介サイトを使っていたりすると、特定するのがさらに困難になる。少ない自治体の予算内で、こうした違法物件をいかに取り締まるかは課題だ。

「民泊OK」を勝ち取ろうと多数派工作の動きも

 民泊禁止の大合唱の中で、都心のマンションでは「民泊OK」を勝ち取ろうと、住民の多数派工作をする動きもある。投資用のマンションを運用しているオーナーから相談を受けた弁護士によると「『管理組合で民泊の賛成票を得るためにはどうすればよいか』と相談に来る人もいる。物件によっては民泊に出せば、賃貸よりも家賃収入が2倍以上に増えるケースもあり、民泊を活用して資産の有効活用を狙うニーズがある」と指摘する。

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