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「民泊2020年問題」勃発 揺らぐ「観光立国」ニッポン「民泊新法」施行直前も届け出わずか724件(5/5 ページ)

» 2018年06月04日 07時00分 公開
[中西享ITmedia]
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中国民泊最大手は「今の状況では数が足りなくなる」

 また、全旅連の多田会長は「民泊に危惧していたのは、宿泊業界が自由競争になり地域住民の安全安心が脅かされることだ。一般の方にも迷惑が掛かるので、地域住民の安全を守るために声を上げて新法の制定をお願いしてきた。届け出件数が少ないことから、現在ある民泊の一部がアンダーグラウンドに入るかもしれないが、保健所などと協力して3年ほど適正化指導をしていきたい」と、民泊の規制を歓迎している。

 一方、中国系民泊サイトの最大手「自在客(ジザイケ)」を運営する健云網絡情報技術有限公司の張志杰CEO(最高経営責任者)は民泊新法について「新法の方向は正しいが、規制が厳し過ぎる。申請、登録のスピードを上げてほしい。少なくとも民泊で1日3万〜4万人泊まれるだけの数を早く認めてほしい」と述べ、日本政府に対して規制緩和と手続きの迅速化を強く求めた。オリンピック期間中はインバウンドの15%が民泊に泊まるとすると、「1日当たり7万〜8万室、ピーク時には15万〜16万室の民泊需要が見込まれる。今の状況では民泊の数が足りなくなる」と指摘した。

phot 自在客のWebサイト
phot 「新法の規制は厳しすぎる」と話す「自在客」運営会社の張志杰CEO

 民泊分野には、市場が拡大すると見込んで、楽天やJTBなど大手企業の参入や連携の動きも出てきている。ファミリーマートもエアビーと提携し、6月にも店舗で民泊施設の鍵の受け渡しを可能にする。だが、急増する訪日外国人の宿泊先の十分な受け皿となるには、現在の届け出件数では不可能だ。日本が「観光立国」を目指す以上、観光庁を中心とした政府には、民泊の届け出件数を増やし、民泊新法の本来の趣旨を達成するための具体策を示すことが望まれる。         

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