日産が22年までにCO2排出量4割削減へ EVの販売増加で対応ESG分野の活動目標を提示(2/3 ページ)

» 2018年06月11日 14時40分 公開
[武田信晃ITmedia]

4:「環境負荷低減の方針は変えない」

 日産は住友商事と、合弁会社4R Energy(フォーアールエナジー)を10年に設立し、EVの車載用リチウムイオンバッテリーの2次利用技術を開発してきた。18年3月には、使用済みリチウムイオンバッテリーの再利用と再製品化に特化した日本初の工場を、福島県浪江町に開設。この工場を積極的に活用して、EVの使用済みリチウムイオンバッテリーの再利用を促し、新規採掘資源への依存を減らしていく。

phot EV の使用済みリチウムイオンバッテリー(日産自動車、住友商事、フォーアールエナジーのプレスリリースより)

 また、車の生産工程で排出される化学物質である揮発性有機化合物(VOC)の低減や、グローバル生産拠点における台当たりの取水量も10年度比で21%減らす。

 EVは多くの電力を必要とし、発電所が従来よりもさらに多くの発電をしなければならなくなるため、逆にCO2の削減が進まないとの見解も一部にはある。だが、川口専務執行役員は「(火力や水力など)電源のベストミックスの話でもあるが、少なくともEVが走るところではCO2は出ないようにする。世界的に見ても今後、自然エネルギーや再生可能エネルギーが強化されるのは間違いない。低炭素な社会基盤を作る上で、EVや燃料電池自動車などの『ゼロ・エミッション車』については環境負荷が小さく、迷いなく開発を進めていきたい」と答えた。

phot 「Nissan Sustainability 2022」について説明する川口均専務執行役員(筆者撮影)

 また、参加した記者からは、米トランプ政権が環境規制の緩和を検討している点にも質問が及んだ。環境への取り組みはコストがかかるため、日産のコスト競争力を奪うのではないかとの問いには、「環境負荷を低減するという方針は変えない。世界的に環境規制が強化されていくのは必然であり、手綱を緩めずに実行していく」と断言した。

「死亡者数ゼロ」に向けて「自動運転」強化

 「社会性」においては、日産車が関わる死亡者数を実質ゼロにする「ゼロ・フェイタリティ」という究極の目標に向かっていくとした。自動運転機能を強化することで、人為的なミスによる交通事故の低減を目指す。具体的な施策として、自動運転機能「プロパイロット」を、22年度末までに20市場20車種に搭載する。

phot 「ゼロ・フェイタリティ」社会の実現を目指す(筆者撮影)

 また、ダイバーシティーとインクルージョンの施策として、女性の管理職比率をグローバルでは18年の14%から23年4月1日までに16%に、日本では同じく10.7%を13%まで引き上げる予定だ。一般社員からリーダー層までの全社員を対象にダイバーシティーとインクルージョンのトレーニングを実施する。さらに「働き方改革」が世間の話題となっているが、在宅勤務やスーパーフレックス制度も積極的に導入し、従業員が多様な働き方を選べる環境を整える。

 サプライチェーンへの取り組みとして、Renault(ルノー)と日産が15年に制定した「ルノー・日産サプライヤーCSRガイドライン」に基づき、第1サプライヤーにガイドラインの順守の徹底を求めるとした。第1次サプライヤーを通じて第2次、第3次のサプライヤーにも取り組むよう促すとしている。

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