「みなさん、これの使い方分かります?」
そう言ってテレビディレクターが、パプアニューギニアのカンバランバ族の子どもたちに差し出したのは、昭和50年代に流行した、座るとオナラのような音が出る「ブーブークッション」だった。
「分かるよ」とひとりの男の子が息を吹き込んで膨らませる。やがてパン! と破裂して驚く子どもたち。そのVTRを見ていたスタジオは笑いに包まれた――。
これは6月16日に放映された『日本で流行したアレ!秘境の民族に渡してみた』(TBS)のワンシーンである。どんな番組かはタイトルがすべて物語っているが、TBSの公式Webサイトには以下のように書いてある。
「日本で見かけなくなった昭和に流行ったグッズを秘境に住むパプアニューギニアの民族に渡したら…我々が予想もしない新たな使い道が見つかる!アノ水枕で親子の感動物語」
TBSといえば、外国人にシャワートイレなどの日本の電化製品を渡して里帰りしてもらい、祖国の家族に「ワオ! やっぱりメイドインジャパンは最高だね」なんて言わせる愛国バラエティ『メイドインジャパン』を定期的に放映している。同番組のコンセプトに最近のトレンドである部族のエッセンスを加えてみた、というのは容易に想像できよう。
「え? 『部族』ってトレンドなの? 初耳!」と驚いている方もいるかもしれないが、実はこの数年、日本のテレビ業界は「部族推し」といっても差し支えない異様な状況となっているのだ。
まず、土曜日にはディレクターのナスDを一躍人気者とした『陸海空 地球征服するなんて』(テレビ朝日)が放映されている。「未知なる部族との接触を計るべく、彼らの元へ潜入取材していく冒険!」(番組Webサイト)をうたう「部族アース」という超人気企画では、さまざまな部族が取り上げられる。
また、同じ曜日には『めちゃ×2イケてるッ!』の後番組として始まった『世界!極タウンに住んでみる』(フジテレビ)というビミョーにカブる番組も放映されており、このなかでもちょこちょこ「部族」というキーワードがあらわれ、5月にはメキシコの大渓谷に暮らすタラウマラ族の村へ行っている。
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