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「部下を褒めると育たない」という思い込みは捨てよう日本は「褒め赤字」(3/3 ページ)

» 2018年07月09日 07時30分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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人は「説得」ではなく「対話」で動く

――先ほど、褒めるためにはトレーニングが必要だとおっしゃいました。「PRAISE」モデルの考え方をもとに、どのような行動につなげれば良いのでしょうか。

 人を動かすために「説得」をする人が多いですが、人は説得ではなく「対話」で動くのです。そして、それを意識していれば褒めることにつながります。

 どういうことかというと、「〜しなさい」と自分の考えを押し付けるのではなく、対話によって「何が問題なのか」を相手に気付かせるようにするのです。そうすれば、こちらも相手の小さな変化や行動に気付くことができ、良いところを指摘するきっかけがたくさん生まれます。

 それを意識することで、「いつも頑張っているね」とか「あなたは仕事ができるね」といった曖昧な表現ではなく、具体的な行動をその場で褒めることができるようになるのです。

――しかし、「今の若い人はしゃべりたがらない」という話も聞きます。

 それは、相手のことを聞いているようで、自分がしゃべっているからではないでしょうか。人は、自分の話を聞いてくれる人を嫌がることはありません。

 男女の会話でもよく言われますが、特に男性は相手の話に対して「ソリューションを提供しよう」という意識が強いのでは。もちろんそれが全ていけないわけではありませんが、まずは相手の話を聞き出すことを意識するべきだと思います。上司と部下という関係に縛られて、「指導しなくては」「教えてあげないと」と考えすぎる必要はないのです。

――自分の体に染みついている経験から、なんとなくコミュニケーションしていてはだめなのですね。

 日本企業は圧倒的なコミュニケーション不全に陥っていると思います。「言わなくても分かる」時代は終わったのです。昔のやり方はもう通用しません。若い人はSNSの承認し合う文化に慣れています。新しいコミュニケーション方法を探っていくしかないのです。

 面倒くさいからといって褒めずに放っておくか、うまくテクニックを使って若い人を動かしていくか。自分自身のためにも、どちらがいいでしょうか?

 世間の常識が変わったのであれば、自らの行動も変えるしかないのです。

岡本純子さんのプロフィール:

 コミュニケーション・ストラテジスト、オジサン研究家。

 読売新聞経済部記者、電通パブリックリレーションズコンサルタントを経て、株式会社グローコム設立。企業PRの知見や、米NYで学んだグローバルスタンダードの最先端ノウハウをもとに、経営者や幹部を対象としたリーダーシップコミュニケーションのプログラムを開発・提供している。

 これまでに1000人近い社長、企業幹部のプレゼン・スピーチなどのコーチングを手掛け、オジサン観察に励む。その経験をもとに、2018年2月、角川新書より『世界一孤独な日本のオジサン』を出版。

 科学的エビデンスのある実践的なノウハウやスキルを分かりやすく伝え、日本人の「コミュニケーション力」とつながりを作る「コミュニティー力」という2つの「コミュ力」強化支援をライフワークとする。

 早稲田大学政経学部政治学科卒、英ケンブリッジ大学院国際関係学修士、元・米MIT比較メディア学客員研究員。


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