架空請求の手口に異変 古典的な「はがき」が急増した理由消費者庁が注意喚起(1/2 ページ)

» 2018年07月23日 12時57分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 電子メールを送付する手口が一般的だった架空請求詐欺に変化が起き、「給与を差し押さえる」などと脅す文面のはがきを一般消費者の自宅に届ける手口が増えていることが消費者庁の調査で分かった。2017年度に全国の消費生活センターに寄せられた相談のうち、はがきを使った架空請求に関するものは前年度比約50倍の10万件に上ったという。

 電子メールやSMSを駆使した詐欺の相談件数も微増しており、全体では前年度比約2倍の約20万件もの相談があったとしている。

photo 実際に届いたはがきの例(=消費者庁の資料より)

あえて古典的な手法に回帰

 消費者庁によると、「電子メールのフィルタリング技術が発展したため、加害者集団はあえて古典的な手法に回帰し、脅す文面を読ませようとしている。被害者は社会経験がやや少ない、50代の専業主婦の女性などが多い」(消費政策課、以下同)と分析する。

 「住所を知られていることから、被害者は『支払わないと何をされるか分からない』『メールと違って無視できない』と感じてしまうようだ」という。

 ただ消費者庁は「加害者集団が自宅まで来て、何らかの被害をもたらす可能性はほとんどない。無視して問題はない」と指摘している。

 同庁によると、詐欺で使われるはがきには東京都内の消印が押され、「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」「訴訟取り下げ最終期日を経て訴訟を開始させていただきます」「このままご連絡なき場合は、給与等の差し押さえ及び、不動産、不動産物の差し押さえを強制的に執行させていただきます」(原文ママ)――などと書かれている。

 差出人は「日本民事訴訟管理センター」「国民訴訟通達センター」などと、公的機関に類似した名称を名乗っている。記載の電話番号に誤って連絡した場合は、銀行口座への振り込み、コンビ二払い、プリペイドカードの購入と番号の通知などを求められるという。

photo 詐欺のスキーム(=消費者庁の資料より)

古い情報が使われている

 「加害者集団は複数なのか単一なのかは分かっていない。ただ、個人情報保護法が施行された05年以前に入手した古い情報が使われているようだ。そのため、比較的引っ越しが少ない地方が狙われている。特定の地域に集中的にはがきを送り付け、時間をおいて別の地域に以降する手口が多い」という。

 はがきには都内の消印が押されているが、「加害者集団が都内に潜伏しているのか、はがきを送るために都内に移動しているのかも不明。今後警察が調査を進める予定」としている。

 はがきによる詐欺被害の金額に絞った調査データは公表されていないが、メール・SMSなどの手口を含めた被害額の平均は約44万円で、最高額は5100万円に上るとしている。

photo 詐欺被害金額(=消費者庁の資料より)
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