また、安全に菓子を作れることを証明する資格「製菓衛生師」を日本で取得して帰国する留学生も多いという。「アジア圏に比べて日本の洋菓子店の衛生基準は高いとされている。母国では効力のない資格だが、取得者は現地の普通のパティシエより『上』の印象を持たれるようだ」(担当者)
留学生の多くは母国で大学を既に卒業しており、過去には弁護士資格を取ってから留学してきた人もいたという。授業料は年間217万円とアジア圏の経済水準からすると決して安くはなく、入学には一定の日本語能力も求められる。「うちはもともと本気の人しか入れない学校。そして生半可な気持ちで入学してくる留学生はいない」(担当者)
日本の高い製菓技術やビジネスモデルをどん欲に学ぶ留学生。ただ、辻調グループの担当者は彼らの卒業後の進路について少し顔を曇らす。「うちの生徒は技術も意識も高い。なのに卒業後、日本で働くことができない」。
アンケートでは製菓学校の留学生の半数以上が「卒業後1〜2年日本で働きたい」と答えた。母国で活躍する前に日本の洋菓子店で実務経験を積むのが目的とみられる。しかし、現行の法規制では外国人のパティシエに就労ビザはほぼ下りない。プリンスさんも「卒業後はバンコクで兄の開くカフェで働く予定だが、機会があったら日本の洋菓子店で働いてみたい」と打ち明ける。
辻調グループの担当者は「(製菓業界でも)人手不足がここまで叫ばれているのに、高い技術を持つ留学生が日本で活躍できないのは残念」と嘆く。和食や和菓子でなく日本の洋菓子に憧れ、高いハードルを越えて学びに来る留学生。日本社会が今後、彼らの思いをくんで活躍の場を提供できるか問われる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング