しかしながら、絶対値として安いことと、企業体力に比してその買収が妥当なのかは別の話である。ドンキが西友を丸ごと買収するには、どの程度のリスクを伴うのだろうか。
ドンキの18年3月期の売上高は前年比13.6%増の9415億円、営業利益は同11.7%増の515億円、純利益は364億円となっている。同社の総資産は8000億円ほどあり、自己資本比率は36%となっている。小売業としては立派な業績だが、この業界は基本的に薄利多売であり、多額の運転資金が必要であることから、余剰の現金はそれほど多くない。
もし西友を買収するのであれば、大型の資金調達を実施するか、負債も含めて合併するといった選択肢にならざるを得ない。西友の資産額は4000億円程度と考えられるので、売却額も近い数字になるだろう。ドンキが好業績といっても、丸ごと買収となった場合にはかなり厳しい金額だ。
考えられるのは、ユニファミマHDの親会社である伊藤忠商事との連携だろう。伊藤忠商事はファミマに追加出資することで子会社化を実施しており、ドンキとの関係はより密になっている。ユニファミマと伊藤忠、そしてドンキという3社連合であれば、買収はかなり現実味を帯びてくる。
そうなってくると、ユニファミマが展開する総合スーパーのユニーと旧西友店舗の統合を進め、ここにドンキ流の新しい売り方を乗せていくという筋書きが見て取れる。
現在、西友は全国に335店舗を展開しているが、地域によってかなりの偏りが見られる。仮にドンキとの資本提携が実現した場合、立地による取捨選択が行われるのは必至だろう。
ドンキとしては、不採算店舗が多数あれば買収金額をディスカウントしたいところだが、ウォルマート側は高値での一括売却を望む可能性が高い。ドンキが西友を買収できるのか、最終的なカギを握っているのは、やはり伊藤忠商事ということになる。
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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