これまで歴代大統領について深く見てきたウッドワードは、今回の『FEAR』の出版に際してこんなことを述べている。「大統領というのは自分の支持基盤だけでなく、この国の全ての人のために働くべきだ」。そして、「私たちは(現政権で)本当に何が起きているのかを知って目を覚ますべきである」と問題提起している。
ウッドワードはこの本をまとめるために、トランプ大統領にも取材を申し込んでいる。しかし、「大統領はインタビューの要請を拒否した」という。だが実は本が出版される直前、ウッドワードとトランプは電話で会話をしている。トランプは、ウッドワードが自分についての本を出すことを知って脅威に感じ、ウッドワードに「協力したい」と電話をかけた。会話の録音音声は、すでにネット上で公開されている。
このテープからもウッドワードの記者としての“技”が垣間見られる。テープによれば、ウッドワードはトランプに対し、議員や側近らにトランプとのインタビューをセットするよう再三要求したが、何の音沙汰もなかったと指摘。するとトランプは、「誰からも何も聞いていない」「誰に取材申し込みをしたのか」とイライラしながら早口で、同じ文句を繰り返す。ウッドワードは、会話を録音していることをはっきりとトランプに伝え、その上でゆっくりとした口調で、トランプに話しかける。「ミスタープレジデント、◯◯に話をしましたが、なんら返答はなかったのです」
非常に冷静沈着だが、言葉に圧倒的な重さがある。これは何十年と大物たちと対峙(たいじ)してきた経験によって出せる空気感なのかもしれない。感情的になったり動揺したりすることは決してなく、最初は取材申請した旨を曖昧に伝え、誰に申請したのかすぐには言わない。「で、誰に申請したんだ」とトランプがいら立つにつれ、小出しに情報を出していく。そして最終的には、取材申請をまったく聞いていなかったと主張していたトランプに、「(インタビュー要請の)話を一瞬だけ聞いたことはあった」と、うそを認めさせている。
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