ボクシングの村田諒太は、“作られた世界王者”だったのか赤坂8丁目発 スポーツ246(1/5 ページ)

» 2018年10月25日 12時28分 公開
[臼北信行ITmedia]

 ショックを受けた人は多いだろう。プロボクシングの村田諒太選手がWBA世界ミドル級王座から陥落した。

 学生時代から思い描き続けてきた米国ラスベガスのメインイベント。ところが夢のリングはゴングが鳴った後、とてつもない残酷な結末が待っていた。相手の指名挑戦者でランキング3位のロブ・ブラント(米国)に0ー3で大差の判定負け。ダウンこそしなかったとはいえ、1200発を超えるパンチを被弾し、顔面を大きく腫らした姿は衝撃的だった。

 誰がどう見ても完敗だった。スピードとフットワークを生かしながら中間距離で矢継ぎ早に次々と強烈なパンチを繰り出す相手の攻撃に最後までペースをつかめなかった。確かに3ラウンド以降、打ち合いに転じてからはいくつかの有効打もあり、重い左のボディブローや右ストレートがヒットするシーンもわずかながらにあった。

 しかし、後半のラウンドになってもブラントの動きは鈍くなるどころかさらに勢い付き、対する村田のほうが逆に疲れが出てペースがガクンと落ちてしまい、ミスブローで体が流れるという今までにない場面も見られた。手数でも圧倒され、終始翻弄(ほんろう)されっ放しだった。

村田諒太選手がWBA世界ミドル級王座から陥落した(写真提供:ゲッティイメージズ)

 ブラントは王者対策を入念に練っていたという。一方の村田には「調整に失敗していた」との指摘も聞こえてくる。加えて王者陣営には「ブラントはオーバーワークで最後は必ずペースが落ちてくる」という読み違いもあり、終盤にじわじわと追い詰めて強打を重ねた後に勝利するプランは水泡に帰した。

 ただ、試合に至るまでどのようなプロセスであったにしても、村田にとって負けは負けだ。その事実はいかなる理由があっても覆しようがない。そして、ブラントのようなハンドスピードが速く手数に優れるアウトボクサータイプの選手に対し、図らずも今の村田のボクシングが通用しづらいことまで証明されてしまった。

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