ボクシングの村田諒太は、“作られた世界王者”だったのか赤坂8丁目発 スポーツ246(4/5 ページ)

» 2018年10月25日 12時28分 公開
[臼北信行ITmedia]

取り返しのつかない事態を招いてしまう危険性

 早くも来春、両者のリマッチをアラム氏が組みたい意向を示している。そして新王者のブラント陣営も敵地・日本での再戦実現にOKする意思を示し、外堀だけは2度目の戦いに向けて埋められつつあるようだ。それでも村田本人は現状、このまま現役引退する可能性も含めて熟慮する時間を求めており、今後についての意思表明はまだ先の話となりそうだ。

 いずれにせよ、最後は自分の意思でどうするかは決めてほしいと願う。今の村田にはあまりにも支援者が多い。今回の試合で村田を協賛し、生配信した「DAZN」の日本法人、スポンサー契約しているクライアント、そして大手広告代理店、村田の試合の放映権を持つフジテレビも本音はいずれも「まだ引退しないでほしい」に決まっている。あまりにも強大な存在になり過ぎた村田は、もう1人で去就を決められるような立場ではないのだ。

 だが、来年1月で33歳を迎える村田に残された時間は多くない。ブラントにリベンジを果たすためには、今のインファイトスタイルから「何か」を変える必要性がある。マイナーチェンジでもいいから長らく続けてきたスタイルにメスを入れなければ、おそらく返り討ちにあうだろう。とはいえ、決して若くない村田が自分の型をぶっ壊し、もう一度、アウトボクサーとの戦い方を再考しながら習得していくのは至難の業だ。

 しかもブラント陣営がアウェーの日本で村田との再戦を望んでいる背景には、自分たちが絶対的な自信を持っていることに加え、高いファイトマネーを得たいという狙いがある。負けるつもりなどサラサラなく、完全に村田は見下されている。

 今回のラスベガスでの世界戦ではブラントの重いパンチをすさまじい数で食らい過ぎたことも気になる。ミドル級の重量感ある一発一発を被弾すれば、確実に体はむしばまれていく。リマッチでもブラントから顔面にたくさんの連打を浴びると、引退してから取り返しのつかない事態を招いてしまう危険性が脳裏をよぎってしまい、何だかとても怖い。

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