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» 2018年10月29日 08時00分 公開

『Dr.スランプ』で「マシリト」と呼ばれた男・鳥嶋和彦の仕事哲学【中編】:『ジャンプ』伝説の編集長は『ドラゴンボール』をいかにして生み出したのか (2/6)

[今野大一,ITmedia]

鳥山さんとの「賭け」から生まれたアラレちゃん

――いつも最初はマイナスからのスタートですね。

 最初からうまくいくなんてことはまずないですよ。不思議島(ワンダー・アイランド)をさまよう元特攻隊の老兵士が何とか空を飛んで日本に帰ろうと試みる話ですが、今思えばウケるわけがないですよね(笑)。そしてそこから、約1年半をかけて鳥山さんとやりとりをして『Dr.スランプ』が生まれるわけです。

phot デビュー作『ワンダー・アイランド』は読者アンケートで最下位になってしまった(『鳥山明○作劇場 1 (ジャンプコミックス) 』より)

 この1年半は僕も鳥山さんも新人だったので、どうすれば面白い漫画を作れるのかを、徹底的に打ち合わせて試行錯誤しました。後に鳥山さんは『Dr.スランプ』の連載をすることになって家を引っ越すことになります。荷物を整理していると押し入れから僕にボツにされた原稿が出てきて、数えてみると500枚もあったそうです。プロの漫画家を作り上げるには、それだけの時間も労力もかかるのです。

 もともと『Dr.スランプ』では、鳥山さんは自称天才科学者の則巻千兵衛を主役と考えていて、キャラクターも気に入っていました。だから少女アンドロイドの則巻アラレは1話しか出てこない予定だったのです。でも、僕はアラレを主人公にした方が良いと思ったので、鳥山さんとある「賭け」をしたんです。女の子を主人公にした漫画(『ギャル刑事トマト』)を描いて、読者アンケートが3位以内だったらそのまま続ける。もし4位以下だったら鳥山さんの言う通り「アラレを1話だけで消していい」と言いました。そして結果は3位だったのです。

 僕が賭けに勝ってアラレが主人公になりましたが、鳥山さんも頑固だから則巻千兵衛を表す『Dr.スランプ』というタイトルだけは変えなかった。テレビアニメでは『Dr.スランプ アラレちゃん』というタイトルになりましたが。

phot 『ワンダー・アイランド』は、元特攻隊の老兵士が空を飛んで日本に帰ろうと試みる話
phot アラレが主人公になった経緯が描かれている。『ギャル刑事トマト』で鳥嶋さんは鳥山さんと賭けをした(『鳥山明○作劇場 1 (ジャンプコミックス) 』より)

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