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幻の鉄道路線「未成線」に秘められた、観光開発の“伸びしろ”杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/6 ページ)

» 2018年11月02日 07時30分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 建設途中で放棄され、完成に至らなかった「未成線」。現在でもその残骸は各地に残っている。鉄道ファンにとっては廃線跡巡りと同様、未成線跡も趣味の対象だ。その未成線の活用を語り合う「第2回全国未成線サミットin赤村」が10月27日、福岡県赤村で開催された。観光開発の新たな手段として注目したい。

 廃線の観光活用については、2017年に当連載で紹介した(関連記事:廃線観光で地域おこし 「日本ロストライン協議会」の使命)。

 全国未成線サミットは「日本ロストライン協議会」の“未成線版”といえそうだ。しかし、廃線に比べると未成線の知名度は低いと思われる。その理由は路線の知名度にある。廃線はかつて存在した線路で、利用者の記憶に残っている。廃止の理由や賛否の議論が報じられ、廃止日は別れを惜しむ人々が集まる。

 それに比べると、未成線は利用者が一人もおらず、記憶されないままひっそりと消えていく。ただし、残された施設の無念さは廃線よりも大きい。何しろ、作られてから一度も使われずに放置されているという運命だ。施設だけではない。建設のために切り倒された木々、すみかを奪われた生き物も浮かばれない。

 未成線が発生した理由のほとんどは、営業しても赤字になるからだ。これは完成したけれども発売されなかったゲームのように、どんな分野にもある。特に未成線については、国鉄の赤字問題と、それを棚上げにして建設を続けた政策に原因があった。国鉄の赤字問題が明るみに出て、赤字路線の廃止が検討される一方で、赤字が予想される新路線の建設が続行された。国鉄が引き受けを拒否しても、地元の要望によって建設された路線たちだ。

 未成線の中には、三陸鉄道や智頭急行のように第三セクター会社が引き受けて完成し、営業を始めたものもある。しかし、多くは経営の枠組みを得られずに建設が中止された。ただし、未成線の線路用地や施設は無償で地元自治体に譲渡されている。もったいない。活用しよう。観光や産業に生かそうという機運が生まれた。

photo 未成線を活用して、赤村トロッコ油須原線(左)と平成筑豊鉄道(右)の赤駅を拠点にトロッコ列車を運行。開業15周年。利用者数は4万人を超えた
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