世界一の印刷インキメーカーが、「食べられる藻」を40年以上前からつくり続ける理由スピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2018年11月06日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

 先日、ひさびさにソーダ味のアイスを食べてちょっと驚いたことがある。

 ベロが青くならないのだ。

 一体なんの話だと首をかしげる方はちょっと子どものころを思い出していただきたい。ソーダ味のアイスを食べると「青色2号」など合成着色力料で舌が真っ青になって、友だち同士で「わあ、気持ち悪い」なんて見せ合いっこした思い出があるはずだ。が、近ごろのアイスはいくら食べても青くならないのだ。

 一体、何が変わったのか。答えは、アイスの袋に表記された「スピルリナ青」という言葉にある。と耳にして「ああ、あれね」とピンときた方はかなりのシャレオツ女子か健康オタクに違いない。

最近のソーダ味のアイスを食べても、舌が青くならない。なぜか

 スピルリナは約30億年前に出現した「藻」の一種で、多くのビタミン・ミネラルに加えて、たんぱく質、鉄分なども豊富である。近年はサプリメントやパウダーにされたものが「スーパーフード」として海外などでは大人気で、あのマドンナやミランダ・カーなども愛飲しているという。

 原物のスピルリナは藻らしく濃い緑色だが、ここから青色色素「フィコシアニン」が抽出できる。そんな植物由来の天然成分がソーダ味のアイスに用いられている、というわけだ。

 多くの人に愛される国民的アイスに大きなイノベーションをもたらし、世界の意識高い系女子たちをとりこにしている「食用藻」――。好奇心が刺激されたので、さらに突っ込んでいろいろと調べてみたところ、あまり世間では知られていない意外な事実が判明した。

 実はこのスピルリナを世界30カ国に供給し、トップシェアを誇っているのは日本企業である。と、ここまではよくあるパターンなので特に驚くような話ではないが、それが印刷インキなどを製造する化学メーカーだと聞いたらどうだろう。

 そう、実は世界最大級のスピルリナメーカーはDIC株式会社(2008年に大日本インキ化学工業から改名)なのだ。

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