日産など3社、29日にトップ会合 すれ違う人事・資本関係での思惑「不平等」な関係の行方(1/2 ページ)

» 2018年11月29日 13時34分 公開
[ロイター]
photo 11月29日、日産自動車、ルノー、三菱自動車の3社の経営トップが、会合を開く。3社連合を主導してきたカルロス・ゴーン容疑者の逮捕後、初となる話し合いでは、今後の3社連合のあり方を協議する。写真は日産自動車のロゴ。2015年5月に横浜で撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 29日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>、ルノー、三菱自動車<7211.T>の3社の経営トップが29日、会合を開く。3社連合を主導してきたカルロス・ゴーン容疑者の逮捕後、初となる話し合いでは、今後の3社連合のあり方を協議する。資本を中心とするルノーとの「不平等な」関係を見直したい日産に対し、支配力を維持し続けたいルノーの思惑はすれ違っており、最終的にどのような合意にたどり着けるのか、明確な姿は見えていない。

<トップ人事、ガバナンスがテーマか>

アムステルダムで開かれる今回の協議でまず焦点になるのが、ゴーン容疑者が務めている開発や調達など共通の戦略を策定する統括会社「ルノー・日産BV」のトップの人選だ。

日産の西川廣人社長兼最高経営責任者(CEO)と三菱自の益子修CEO兼暫定会長は、テレビ中継で参加。ルノーからは暫定CEOのティエリー・ボロレ最高執行責任者(COO)が出席する。

益子CEOは、会合では「今後のことについて話し合う時間を持ちたい」と記者団に説明。また、「1回の打ち合わせですべてが(決まる)ということではない」とも付け加えた。

ルノー・日産BVは、2002年に日産とルノーが折半出資で設立。そのトップは、ルノーのCEOが兼務するという規定があり、重要事項の決定で強い権限を持つ。ルノーの大株主は15%を出資するフランス政府。同国のルメール経済・財務相も、統括会社のトップは規定通りルノー出身者が望ましいと主張している。

ただ、ルノー出身のゴーン容疑者が東京地検特捜部に逮捕されたことで、統括会社のトップが引き続きルノー出身者となることには「やや抵抗がある」と日産幹部は話す。

ルノーは逮捕の証拠が明確でないとしてゴーン会長の解任を見送っており、解任した日産、三菱自とは対応が分かれた。再びルノーからトップが就けば「日産への『干渉』がきつくなるのでは」(日産幹部)と警戒する。

ゴーン統治の負の側面があった、権力が1人に集中し過ぎた――。西川社長はゴーン容疑者逮捕を受けた19日の会見で、こう言い放った。日産に約43%出資するルノーのトップが日産のトップも兼任していたことはガバナンス(企業統治)の点で問題だったとも指摘。事業運営を含め、「(見直しが)必要な部分は、時間を置かずに明確な手を打っていきたい」と明言した。

<資本関係見直しを模索する日産>

ゴーン容疑者の不正問題は、日産にとってこれまで不満がくすぶり続けていた「ゆがんだ資本関係も見直せる、千載一遇のチャンス」(自動車業界アナリスト)でもある。「今回は踏み込んだ議論はされない」(日産幹部)予定だが、3社のトップ会合がその第一歩となる可能性もある。

別の日産幹部は「ルノーと日産が対等な関係を構築し、各社がより独立した形で、ウィン・ウィンを目指すという原点に戻るべきではないか」と述べ、ルノーとの資本関係を見直す必要性を強調する。

ルノーは日産株を約43%持ち議決権もある一方、日産はルノー株を15%持つが議決権はない。フランスの法律上、40%以上の出資を受けている企業は、出資元の企業の株式を保有していても議決権を持てないためだ。

両社の資本関係は1999年に経営危機に陥った日産をルノーが救済したことに始まるが、現在はルノーを日産の業績が支えている。日産は販売台数や収益力などの点でルノーを上回っているが、資本面ではルノーに支配される形だ。業務面でも「ルノー救済策」(元・日産幹部)とみられる判断が、たびたびあったという。

ゆがみを解消するために取りうる選択肢として、1)ルノーの日産への出資比率を40%未満に引き下げれば、日産が議決権を持てる可能性がある(フランスの法律に基づく)、2)日産がルノー株を25%まで買い増せば、ルノーが持つ日産に対する議決権が消える(日本の法律に基づく)――の2つがあるとみられている。

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