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» 2018年12月10日 07時00分 公開

映像ジャーナリスト数土直志が問う:アジア攻めるNetflix、日本作品は生き残れるか 首脳部に直撃 (1/7)

映像配信の帝王、Netflixのアジア戦略に密着。シンガポールのイベントでは日本コンテンツの微妙な立ち位置が浮き彫りに。幹部は日本の出版社買収にも関心抱く。

[数土直志,ITmedia]

 全世界での契約数が1億3000万世帯と、映像配信ビジネスのトップを走るNetflix。11月、シンガポールで「See What's Next: Asia」と題した大型カンファレンスを実施した。同社がメディアに向けてこうした催しをアジアで開催するのはこれが初だ。

 その狙いはアジア市場の攻略。巨大な人口ながらいまだ支配的な映像配信サービスの企業がないアジアは今後、映像配信ビジネスの主戦場になる可能性が高い。そこに先手を打とうとアジア市場重視を宣言した形だ。

 そこで気になるのが日本の立ち位置だ。Netflixにとってのアジア、その中で日本はどんな意味を持っているのだろうか。シンガポールで体験した「See What's Next: Asia」から同社と日本の映像コンテンツの未来を探ってみたい。後半では現地で行ったNetflixの最高コンテンツ責任者のテッド・サランドス氏のインタビューも届ける。

アジアではインド・韓国・日本に照準

 11月8日、9日、シンガポールのサンズ・エキスポコンベンションセンターにてNetflixが主催するカンファレンスイベント「See What's Next: Asia」が開催された。この場でNetflixは最新作、サービス、戦略を次々に発表していった。

photo See What's Next: Asiaでアニメ化が発表された橋本花鳥氏のSFマンガ「虫籠のカガステル」(Netflix提供)

 2日間にわたったイベントに、「ハウス・オブ・カード 野望の階段」主演のロビン・ライト氏といった世界各国の有名俳優・女優や監督、プロデューサーが次々に登壇した。メディアだけでなくアジア各国の有力インフルレンサーも招待し、Netflixブランドの拡散を狙った。

 開催地にシンガポールが選ばれた理由はシンプルだ。Netflixの事業はシリコンバレーの本社に加えて、ヨーロッパではオランダ・アムステルダム、アジアではシンガポールを拠点にしているためだ。シンガポールからさらにアジアに複数のオフィスが広がっている。

 アジアという視点で印象的だったのは、各地域の担当者が登壇し作品をアピールするセッションだ。登壇者は4人、それぞれ「東南アジア」「インド」「韓国」「日本」を代表する。

 Netflixはアジア太平洋地域を、この4つのエリアに分けてビジネス展開している。アジア最大のマーケットである中国には進出しておらず、オーストラリア、ニュージーランドは北米・英国など英語圏市場とされるためここには含まれない。国ごとでフォーカスするのは、インド、韓国、日本。それぞれに理由があるとみていいだろう。

 独自の世界を持ち、グローバルと距離があるように感じられるインドにNetflixがフォーカスする点は、日本の感覚ではちょっと分かりづらい。しかしこれは合理的な選択だ。インド映画は世界的に評価が高いし、インド人の映画好きもよく知られている。

 さらに13億人超の人口が大きい。中国進出を阻まれているNetflixにとってインドは世界最大の市場である。もちろん、東アジアの国々などに比べてインドの国民1人当たりの所得は小さい。

 しかしここにNetflixのマジックがある。CEOのリード・ヘイスティングス氏は、アジア地域での所得差とサービス価格についてこう説明する。「iPhoneの価格が世界のどの地域でも同じように、Netflixの利用料金を地域によってそれほど変えるつもりはない」。

 つまり契約世帯数に売り上げを依存するNetflixにとって、ユーザー当たりの料金が同じであれば、より人口が多い地域が潜在的なマーケットになる。インドの人口は日本の10倍で、所得の高い富裕層も当然、一定数いる。

 人口5000万人の韓国の重要性は、インドとは異なる。今回、カンファレンスでは新作オリジナルドラマとして韓国作品が次々に紹介された。1日目のハイライトは19年1月25日に世界同時配信予定の大作「キングダム」のプレミア上映だった。

photo Netflixの韓国での新作オリジナルドラマ「キングダム」(同社提供)

 筆者は韓流ドラマをほとんど知らず、出演俳優や監督の知識も薄い。それでも本作はとても満喫できた。韓国の歴史ドラマと思いきや、実際はゾンビとの戦いが主軸で驚かされた。アクションとバイオレンス、そこに王朝ドラマ。いかにもNetflixらしいエンタテイメントに仕上がっている。

 一昔前のフォーマット化された恋愛モノ、時代モノといった先入観と異なった韓国ドラマの進化を見せつけられた。豊富な制作予算で豪華に作られた本作が、本国に限らず世界、とりわけ韓流ドラマの人気が高いアジア市場を狙っていることは間違いない。豪華に作られた本作も、本国に限らず世界、とりわけ韓流ドラマの人気が高いアジア市場を狙っていることは間違いない。人口が必ずしも多くない韓国に期待する役割はコンテツ制作、発信ハブなのだろう。

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