岩崎さんによると、「節分に巻きずしを食べる風習」が全国化するための“種まき”を担当したのが、大阪にあるすし店やその材料であるノリ、厚焼き玉子の組合だった。1970年代頃から彼らは節分に巻きずしを食べる言われを盛り込んだチラシを大々的に広めるようになったという。ノリの組合は節分の時期にセールを行い、巻きずしの丸かぶり(丸かじり)イベントなどで盛り上げることでマスコミへの露出も強めていった。
次の転機となったのが大手スーパーチェーンによる販促の全国展開だったという。岩崎さんによると、1982年頃にはジャスコ(現イオン)が厚焼き玉子の組合の作ったチラシを店頭に置くようになった。他のスーパーも追随するようになり、新聞にチラシを折り込むなどして巻きずしを節分に食べるようアピールしていった。
岩崎さんは「スーパーとしては他の物も一緒に売るための工夫だった。店側が『節分に巻きずしを食べるのは伝統』と説明することで、知らない人も『昔からやってるんだ』と思うようになった」と説明する。こうして近畿や他の地方にも徐々に販促キャンペーンが広がっていったという。
そして「全国展開の仕上げを担った」と岩崎さんがみるのがコンビニだ。全国チェーンのスーパーより、地方の郡部にも細かく出店している点が大きかったという。80年代から販売が始まったとみられ、少なくとも89年にはセブン‐イレブンが広島県の一部地域で発売した。
セブン&アイ・ホールディングスによると、現地の店のオーナーから「こんな面白い風習がある」と提案があったのがきっかけだった。ちなみにこの時には現在の「恵方巻」という呼称が使われていたという。その後、同社が98年に全国発売するなど、コンビニ業界全体で恵方巻きを全国で展開するようになっていった。
恵方巻きが話題の行事になっていった理由について、岩崎さんは「もともと節分は『悪いものを追い払う』行事。正月のように神様にささげる供物、つまりごちそうが必要なイベントではなかった。そこにうまく巻きずしが入り込んだ」と説明する。
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