なぜ、回転しない店は成功したのだろうか? その分析をする前に、そもそも、回転すしというスタイルにどんなメリットがあるのかという点を確認してみよう。
回転すし業界はもともと低価格・高原価率のビジネスモデルとなっている。原価率とは売上高に占める原価(商品の仕入れや製造にかかる費用)の割合を指す。すしでいうとシャリとネタが多くの部分を占める。お客は「低価格なのに、これだけおいしいのか」という満足を求める。
低価格を実現するには、人件費を削減しないといけない。「配膳」「オーダーを受ける」といった作業を省略するにはどうすべきか。店員がつくったすしを回転レーンに流せば、お客が勝手にすしをとって食べてくれる。法師人社長によると、省力化を推進するため10年以上前までは「注文を受けない」というスタイルの回転すし店もあったという。
すしが目の前でぐるぐると回る光景にはエンターテインメント性もある。さらに、目の前をすしが流れていると、「おいしそうだ」と思ってついつい手に取ってしまう効果も期待できる。あくまで一般論だが、お店の側からすると原価率の低い商品を提供できるメリットもある。
大手すしチェーンはこのシステムを進化させてきた。時間帯ごとに提供するすしの量や種類を変えたり、廃棄率を低くするためにデータ分析の精度を上げたりしてきた。
元気寿司が回らないすし路線に踏み出した背景にあるのは、お客が注文した商品を特急レーンで迅速に提供できる体制が構築できたことだ。お客がタブレットで注文する。その注文を受けて店員は厨房ですしロボットなどを駆使し、迅速に調理をする。ラーメンなどのサイドメニューを提供するための調理器具も進化している。こういった企業努力の結果、「できたてのすしが食べたい」というニーズに応える素地は出来上がっていたのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング