――そもそも、テレビ番組もネットなどの内容を参考にした物が最近は散見されます。昨今台頭しているネットメディアが、安易にテレビの内容を“コピペ”してしまう一方で、テレビ側も明らかにネットの情報に頼っていると実感します。作り手が安きに流れている面もあるのでしょうか。
吉川: テレビもネットも悪いところはあると思います。ただ、やっぱり一次情報という物をテレビはあまり拾わなくなってきた。「ダーツの旅」なんか、全部が“一次情報”でした。他の要素は無かった。事前に(行き先の市町村について)調べていかなかったから。
今のテレビマンたちは、テレビを見て番組の企画書を書いている。他局か、下手したら自局の番組を、です。僕の現役の頃は、優秀な先輩から「テレビ以外に映画や小説を読め」「休みをとったら香港でもNYでもいい、海外に行け」と言われたものです。そうやって得た情報から、「どうして面白いのか」の要素を分解し、テレビに生かすにはどうすれば良いのかを考えました。
でも、今の人はテレビを見てテレビを作っている。だからみんな同じになってしまう。
また、今の番組には「意図」が無いとも感じます。例えば、(バラエティー番組の)フリートークなんて昔は無かったんですよ。事前に台本があって、それを出演者が自分なりにさらに咀嚼(そしゃく)してしゃべっていた。
『踊る!さんま御殿!!』では、「私の嫌いな男」とかのテーマで事前にアンケートを取り、「こういう出し方したら面白いだろう」と順番を考えて並べ、明石家さんまさんがトークするわけです。ただ、さんまさんには事前に何も言わない。あの人は天才なので、反射神経でやれてしまうから。
『恋のから騒ぎ』も、日本全国で(出場者の)オーディションをやったりとか、見えない手間がすごくかかっていました。今はそういうことをやらずに、もっとお気楽にテレビを作っている気がしますね。
――バラエティーだけでなく、ワイドショーでもテレビにかつての勢いをあまり感じない気がします。賛否の分かれるテーマですが、有名人のスキャンダルは週刊誌が主に手掛けるようになりました。
吉川: 昔は芸能スキャンダルもテレビ局がやっていました。梨元勝さんといった芸能レポーターが各局にいたものです。自局でお金を掛けて作っているドラマに出演する女優に対し、(ワイドショーで)足を引っ張るような放送もしたりと。
昔はテレビ局の方がヒエラルキーが高くて、プロデューサーと口をきくことのできない(芸能人の)マネジャーなどもいたものです。でも今は、テレビ局と芸能界側の力関係が変わり、芸能界の方が少し強くなってしまいました。だからワイドショーもやりづらくなってきた。週刊文春も(スキャンダルの)映像を撮っていて、それを(テレビ局が)お金を出して借りたりしている。
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