田原総一朗が憲法9条で安倍首相を斬る――「“改憲した総理”になりたいだけ」参院選を前に「タブー」に迫る(2/5 ページ)

» 2019年06月25日 05時00分 公開
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「戦争知る人間が政治家である限り、戦争はしない」

――自衛隊が戦えない、“軍隊でない軍隊”であることで戦後日本は平和を維持した、という言説は広く聞かれます。

田原: 竹下登さんが総理大臣の時、僕は「日本の自衛隊は戦えない軍隊だ、こんな戦えない軍隊でいいのか」と聞いた。竹下さんは「戦えないからいいんだ。戦っちゃうと大東亜戦争(太平洋戦争)だ、負けるに決まっている。戦わないから日本は平和なんだ」と言った。

 大東亜戦争(太平洋戦争)を知っている政治家はみんな、「戦えないからいいんだ」と言いました。田中角栄さんも僕に何度も言った。「あの戦争を知っている人間たちが政治家である限り、日本は戦争をしない」と。

 問題は、冷戦が終わった時のことです。冷戦時の日本の敵はソ連だよね。ソ連と戦争して勝てるわけがない。だから、(日本にとっての)安全保障とは、憲法を逆手にとってアメリカの戦争に巻き込まれないことでした。

 だが、冷戦が終わってソ連(ロシア)が敵でなくなった。リベラルを中心に当時、「対米従属をやめて日本は自立すべきだ」という意見が出た。朝日新聞もややそういう意見でした。これがいまいちリアリティーが無かったのです。鳩山由紀夫さんは「米軍は日本から全部撤退してもらい、必要な時だけ来てもらう」という、「常時駐留なき安保」を唱えていた。でも、アメリカが撤退して日本だけで守れるのかと。

 冷戦の時になぜアメリカが日本を守ったのか。日本を守ったのではなく、東西冷戦の時に日本は西側の極東部分だった。そこをアメリカが守ったのが日米安保です。でも、アメリカは極東を守る責任が無くなった。だから下手を打つとアメリカから捨てられる可能性がある。

 日米安保は片務条約です。日本が襲われたら日本をアメリカが守る。でも、アメリカが襲われても日本は守らない。それでは捨てられる可能性があるので、片務から双務にすべきだと。アメリカが攻められた時に日本も(アメリカを)守る。これをやったのが2014年の安倍内閣の集団的自衛権(の行使容認)です。保守系の学者がこの主張を支持し、安倍さんにやらせた。

 これに対して当時の民主党は反対だと言いましたが、これもインチキでした。もしも彼らが政権を取りたいなら、対案を出すべきだと。(当時の)前原誠司さん、枝野幸男さん、細野豪志さんが対案を作ろうとした。ところが中でもめて対案ができない。朝日新聞なんかも集団的自衛権には反対だと。「ではどうするんだ」と言っても(対案が)無い。だから今、リベラルが弱い。今の野党の弱さでもあります。

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