ヤマダデンキ、JR東、高島屋も……各社が急速に「銀行サービス」を開始したワケ(1/4 ページ)

» 2024年05月13日 08時30分 公開
[斎藤健二ITmedia]

【編集履歴:2024年5月13日午前11時55分 初出時、記事タイトルに誤りがありました。お詫びして訂正いたします】

 百貨店の高島屋や航空会社のJAL、プロ野球の北海道日本ハムファイターズなど、金融業界以外の企業が次々と銀行サービスに参入し話題を呼んでいる。さらにこの4月には、JR東日本も「JRE BANK」の名称で銀行サービスを開始すると発表した。

 ただ、これらの企業が自前で銀行免許を取得して銀行業に乗り出すわけではない。彼らが活用しているのが、既存の銀行が持つ金融機能をサービスとして提供するBaaS(Banking as a Service)だ。APIやクラウド技術の進歩を背景に、BaaSを通じて銀行の機能を自社サービスに組み込む動きが加速している。JRE BANKも楽天銀行とJR東日本との協業で実現するものだ。

 このBaaSの分野で先駆的な存在が、住信SBIネット銀行だ。2020年から「NEOBANK」のブランド名でBaaSを展開し、すでに16社と提携。金融の枠を超えた独自のエコシステム構築を進めている。

 なぜ今、銀行以外の企業が金融サービスに注目するのか。そして、彼らを後押しする住信SBIネット銀行の狙いとは。同行でネオバンク事業を統括する住信SBIネット銀行執行役員 兼 BaaS事業本部本部長の前田洋海氏に話を聞いた。

ヤマダデンキ、JR東も……なぜ「銀行」に参入?

 近年、小売業や交通機関など、金融業界以外の企業が次々と銀行サービスに参入している。こうしたサービスは、企業にとってどのような意義があるのだろうか。

 前田氏は「企業は銀行サービスそのものを新規事業としてやりたいわけではありません。銀行機能を活用して、自社の顧客に新しい価値を提供したいのです」と語る。

 企業にとってNEOBANKは、顧客との接点を強化し、ビジネスを拡大するための戦略的ツールとして機能している。「提携企業の売り上げアップやコスト削減に直結することが、私たちが提供するNEOBANKサービスの特長です」と前田氏は強調する。

 例えば、企業にとってクレジットカードなど決済サービスの手数料は少なくないため負担になる。NEOBANKサービスでは、銀行口座から直接支払うコード決済サービスも提供しており、加盟店側は手数料0円で利用できる。

 例えばヤマダデンキが「ヤマダNEOBANK」の中で提供している「ヤマダPay」がそれに当たる。手数料がかからない分、ヤマダPayで決済したら1%相当のポイントなどを顧客に還元可能なわけだ。

 「自社サービスとして決済まで提供することによって、顧客接点を増やして売り上げにつながる好循環が生まれる。新しい客層が入ってきて、お店に行って使う。これがNEOBANKの提携先さまの一番の狙いなんです」(前田氏)

銀行 提携企業にとってのメリットは、「コスト削減」「収益源の多様化」「ロイヤリティの高い顧客の獲得」だ。マーケティング目的での導入がメインだが、NEOBANKサービス単体でしっかり利益が出る構造だという(住信SBIネット銀行2024年3月期第三四半期決算資料より)
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