NEOBANKサービスを導入し、成功を収めている企業の事例は、小売業や交通機関だけでなく、保険会社や証券会社にも広がっている。
百貨店の高島屋では、以前から行っていた友の会の会員サービスをデジタル化し、「スゴ積み」としてNEOBANKと連携。オンライン上で積立を行い、たまった残高にボーナスを付与、一定期間後に店舗で使えるようにした。この取り組みにより、若年層の取り込みと消費喚起に成功している。
具体的には「タカシマヤNEOBANK」の口座開設者の平均年齢が、従来の友の会会員よりも20歳以上若くなったという。また、定期積立による1回あたりの購入単価が1.5倍に増加。店舗での購買頻度も向上しているそうだ。
北海道日本ハムファイターズは、住信SBIネット銀行が提供する「F NEOBANK」をファンに向けて展開。グループ会社が提供する新スタジアム「エスコンフィールドHOKKAIDO」でのキャッシュレス決済との連携や、先行入場特典の提供などに活用している。決済に対してチケットやグッズと交換できる「Fマイル」を還元するなど、ファンエンゲージメントの向上につなげている。
保険業界では、第一生命保険がNEOBANKサービス「第一生命NEOBANK」を展開。保険契約者向けの付加価値サービスとして、預金や決済などの銀行機能を提供している。
保険会社の課題の一つに、保険金の支払いが一時的なものにとどまるため、顧客との継続的な接点を作りにくいという点がある。「第一生命ネオバンク」では、保険金受取口座をNEOBANKに設定してもらうことで、保険契約終了後も顧客とのリレーションを維持。将来的な保険ニーズの取り込みにつなげる狙いがあるという。
証券業界でも、松井証券が「MATSUI Bank」を開始。証券取引で発生する余剰資金を、NEOBANKの円預金で運用できるサービスを提供している。
従来、証券会社における顧客の余剰資金は、他行預金などに置くことが一般的だった。しかし、「MATSUI Bank」であれば、自動スイープ機能により、余剰資金を有利な金利で運用しつつ、必要に応じて証券口座に移管することが可能だ。円普通預金金利0.2%と高金利を付けることで、サービス開始から4カ月で口座数3万口座、預金残高300億円を突破した。
これらの事例に共通するのは、NEOBANKが単なる金融サービスではなく、マーケティング施策の一環として機能している点だ。顧客との接点を強化し、購買体験を向上させることで、ビジネス課題の解決につなげている。
また、銀行サービスと他のサービスの連携を進めている点も見逃せない。例えば、住信SBIネット銀行が提供する「JAL NEOBANK」は、「JALマイレージバンク」アプリとの連携により、預金残高に応じてマイルがたまるサービスなどを実現。JALの多様なサービスと連携し、シームレスな利用を実現し、相乗効果を生み出している。
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