「手数料無料」で打撃の楽天証券が、ゼロ化を武器に今後伸びそうな理由SBI証券と比較(1/2 ページ)

» 2024年02月22日 08時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

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 2023年10月に、競合SBI証券に追随する形で、本来であればやりたくなかった国内株式の売買手数料無料化に踏み切った楽天証券。2月9日に開示した2023年12月期の決算によると、通期では増収増益を果たしたものの、10〜12月期にあたる第4四半期単体で見ると、売上高の伸びも小さく、減益となった。

 第2四半期、第3四半期と前年比26%の増収を続けてきたが、第4四半期の伸びは8%。増収額は18億5300万円にとどまった。決算会見に臨んだ楽天証券の楠雄治社長は、仮に手数料を無料化しなかったら? と問われ、「プラス40億円から45億円くらいだった可能性がある」と答えた。45億円積み増せたなら、従来と同じペースの26%増を果たせたという目算だ。

楽天 楽天証券の営業収益(売上高にあたる)は、対前年20%で伸びてきたが、国内株式売買手数料を無料化(ゼロ化)した第4四半期は伸びが減速した

対して、SBI証券の業績は?

 手数料無料化のマイナス影響は、SBI証券でもほぼ同等のようだ。24年3月期において、第1四半期が34%増、第2四半期が20%増と増収を続けてきたSBI証券だが、10〜12月期にあたる第3四半期は9%の伸びにとどまった。営業利益も四半期単体では減益となっており、構図としては楽天証券同様だ。

 収益的にはダメージの大きい手数料無料化だったが、「(手数料)ゼロ化も武器になる」と楠社長は言う。今回、NISA口座における手数料無料化についてはネット証券各社は足並みをそろえてきたが、通常口座での手数料無料化に踏み切ったのは、結局SBI証券と楽天証券だけだ。

 「ゼロ化を実施した会社とそうでないところでは、口座数の増え方、売買代金の増え方に差がつきつつある。非ゼロ化証券会社からの入庫の数字も増えている」(楠氏)

楽天 楽天証券の営業利益の推移。国内株式売買手数料を無料化(ゼロ化)した第4四半期は、増収幅減少の影響で減益となった

 そもそもネット証券のオリジンは、売買手数料が自由化された25年前にある。当初は、成行注文が1900円、指値注文が2500円からスタートし、徐々に手数料を引き下げてきたというのが、ネット証券の歴史だ。手数料を下げるたびに新規顧客も増加し、一時的な収益減を数カ月でリカバリーするというサイクルを繰り返してきた。

 今回のゼロ化は「(リカバリーには)数カ月よりかかるだろうが、経験則からいうと、新規顧客からするとゼロと非ゼロは大きな違い。集客効果は上がり、取引の増加にもつながっていく」と楠氏は見る。足元では、10〜12月の国内株式の売買シェアは34.6%と前年同期から2.1ポイント増加した。

楽天 国内株式売買手数料を無料化(ゼロ化)の影響で40億〜45億円相当の減収となったが、信用取引などの金融収益や債券販売などで営業収益を押し上げ、10−12月についても増収を確保した(楽天証券決算資料より)
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