売上高1兆円を突破し、勢いが止まらないオープンハウス。圧倒的な急成長の背景には、「最強の営業組織」が存在する。オープンハウスと聞くと“売って売って売りまくる”、モーレツ営業のイメージを持つ人も多いかもしれないが、実際はデータを駆使し、デジタルとリアルを掛け合わせ、効率的な組織運営を実現している――。
今回は前編・後編の2本立てで、オープンハウスの強い営業組織を徹底解剖していく。
2023年9月期決算で「売上高1兆円」を突破し、話題を集めたオープンハウス。オープンハウスといえば「営業力最強」というイメージを持つ人も少なくないだろう。前回の記事では、同社の住宅販売における営業DXと、独自の組織作りについて紹介した。
<参考:優秀な営業マンにあえて「売らせない」 オープンハウス流、強い組織の作り方>
同社には、不動産会社から土地の仕入れやテナントビルの購入を行い、利益を得るBtoBのビジネスも存在する。このBtoB事業では、営業手法のほとんどが「飛び込み営業」だ。
飛び込みと聞くと“キツい”イメージがあるが、同社では“独自の地図”を開発し、デジタルを活用して効率的に営業活動を推進。最強の飛び込み営業を実現しているという。
この独自の地図とは一体、どのようなものなのか……? オープンハウス・ディベロップメント 開発事業部 部長代理の須藤光輝さん、オープンハウス・リアルエステート ソリューション事業部 事業推進部長の奥井雄貴さんに話を聞いた。
須藤さんが所属する開発事業部は、不動産会社から戸建ての土地の購入を担う。180人ほどの営業パーソンが日々街の不動産会社、不動産仲介会社に飛び込み営業をし、土地の売却の情報などを仕入れる。
奥井さんは収益不動産事業の営業を担当している。収益不動産事業では、マンションやアパート、店舗ビルといった物件を不動産会社から購入。中古の物件を購入し、バリューアップを施して消費者に販売している。
どちらも顧客は不動産業者で、戸建ての営業と比較して飛び込み営業が圧倒的に多いのが特徴だ。須藤さんは「しらみつぶしに全業者さまに営業活動をしています」と話す。
対不動産会社の飛び込み営業を支えるのが、独自の営業支援ツール「AetA(アエタ)」だ。
AetAは、名刺管理をベースに、営業活動、案件管理を一元化する統合管理システムだ。不動産業者のデータと位置情報を地図で見える化しており、営業パーソンは地図を一目見れば顧客の位置関係を把握できる。地図上で不動産会社を選択すると、会社情報に加えて、同社の営業がいつ、どんな営業活動をしたかが表示される。
また、新たに担当者の名刺を撮影すれば、AetA内にデータとして取り込まれる。
「AetAはSFA、地図、名刺管理アプリを全て合わせ、いいところを抜き出したような、そんなツールです」(奥井さん)
外回りが多いとなかなかPCを開く時間が取れないため、AetAは全てスマホで完結できる仕様にした。
AetAでは、各不動産会社にいつ、どれくらいの頻度でアタックをしているかは公開するが、誰がアタックをしているかは現場の営業パーソンにあえて非公開にしている。
「当社では、各不動産会社に対して特定の担当者を置かず、誰が、どの会社・どの担当者にも営業活動をしていいという独自のルールを設けています。特定の担当者を置くことで、油断と隙が生まれて、受注できる案件を逃してしまう懸念があるからです。私はこれを『ジャングルルール』と呼んでいます(笑)
『〇〇さんが行ってるから自分は行かなくていいや』という考えは、営業活動においてネガティブな要素になります。全員が全ての顧客にアタックでき、営業パーソン同士がライバルとして競い合う環境があることで、緊張感が常に生まれ続けます」(奥井さん)
一方で、管理者は各営業パーソンの行動量を把握するため、日々の営業活動の記録をAetAで管理している。
「クライアント先に入った時間と出る時間を自動で計測。営業のAくんが1日に何社訪問してどれぐらい接触が成功したか、何分程度担当者と話ができたのかを全てデータ化しています」(奥井さん)
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