同社は他にも、チラシの自動作成やデータベースへの自動入力・更新など、さまざまな面で業務の効率化に取り組んでいる。年間11万時間、2021年からの3年間で計26.2万時間の業務削減に成功した。須藤さんは「事業部で日々自動化ツールを作っているため、実際の数字はもっと大きいのかもしれない」と話す。
「意思決定の速さ」でもDXが一役買う。不動産会社から土地を仕入れた際に、「いくらで買い取るか」を社内役員が検討する際、社内データや自動化システムを活用し、時短を実現しているのだ。
同社の過去取引と他社の販売情報をデータベース化しており、新規取引の情報を入力すれば、いくらぐらいで販売価格を設定すれば購入されやすいかを瞬時に判断できる。
「今までは各営業パーソンが情報収集をし、1時間程度かけていた作業が、数十秒で完結します。
業務時間を削減することで、営業パーソンたちが現場に向かえる時間が増えるほか、残業が減って働き方改革が進みました。また、一人の営業パーソンに依存していたクオリティーが平準化して、全員の一人当たりの生産性も高まりましたね」(須藤さん)
同社が売上1兆円を大幅に上回り達成できた背景には、最強の営業力とそれを下支えする営業DXへの投資があるのだろう。営業DXが進行する今、営業パーソンに求められているのは、どんな能力なのだろう。
「泥臭さでしょうか。当社では、どんな人でも続ければ結果が出るように社内教育を充実させており、結果が出るまでやり続けられるかどうかが重視される能力だと考えています。
中にはまれにスーパースターのような天才もいますが、大多数が凡庸な営業パーソンなので、泥臭くやり続けられるかが、今も昔も変わらず重要ですね」(奥井さん)
「営業DXを進める前も今も変わらず、足を使った営業を一番大事にしています。当社では『接触時間』と呼んでいますが、お客さまと話している時間を多く確保するために、営業DXを推進しています。
私が所属する土地の仕入れでは、成約率の目標をチーム内で明示し、その数字を追い続けて日々営業活動に励んでいます。データやシステムを活用し、『あとどれくらい訪問すれば、目標数字を達成するか』を見える化し、都度確認しながら働けることは、営業パーソンの心の支えにもなっていますね」(須藤さん)
今後はシステムのさらなる改善と、ガバナンス強化に努める。AetAには、資料作成などのPCでしかできない業務もスマホで完結できるよう、機能の追加を目指す。
「営業パーソンにとって、移動時間ほど無駄なものはありません。営業に付随する全ての業務がスマホで完結すれば、電車内で業務を進められます。どこでも誰でも、移動時間ですらスマホ一つで仕事ができる――より使いやすいものに改善していきます」(奥井さん)
「私はどちらかというと守りの視点で、お客さまからのクレームを減らすための取り組みを強化していきます。例えば、組織体制上、お客さまに当社の営業から何度も電話をかけてしまう場合がありますが、その日に電話をかけた時間や回数を見える化し、『30分以内に2回目の電話はできない』とシステム上ルールを設けています。
お客さまと気持ちよく仕事をしていくためにも、ネガティブな情報を組み込み、意図せぬクレームを生まないシステムを構築していきたいですね」(須藤さん)
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