このように「表現の自由」というのは、賛否が付きまとう難しい問題である。そこで米国に目を移すと、あちらでも「表現の自由」を標榜(ひょうぼう)していたインターネット掲示板サイト「8chan」が閉鎖に追い込まれる事態になって、話題になっている。
この話は、企業の危機管理や「表現の自由」との関わり方として、参考になるケースでもある。いったい何があったのか。
8月3日、米テキサス州エルパソで、自動小銃を持ったパトリック・クルシアス容疑者(21)が米小売大手のウォルマートに現れて発砲、22人を殺害した。この事件では、クルシアスが「8chan」に、4ページにわたる白人至上主義的な犯行声明を投稿していたのが発見されたことで、さらに騒動は大きくなった。この声明は、「みんなもそれぞれが動いて、これを拡大させるのだ」と暴力を扇動するようなものだった。
しかも「8chan」がこうしたヘイトクライムに関連する犯罪に使われたのは、今回で3度目だと指摘された。今回の声明では、クルシアスと思われる投稿者が、2019年3月にニュージーランドのクライストチャーチにあるモスクで起きた銃撃による大量殺人事件に影響を受けたと述べていた。この事件でも犯人は「8chan」にメッセージを載せていた。また4月にはカリフォルニア州ポウェイで銃撃事件が起きているが、この事件でも犯行前に反イスラムの犯行声明が「8chan」に上げられていたと指摘されている。
つまり、「8chan」に掲載される犯行声明などが、実際の事件につながっていることを示唆している。米メディアによれば、「8chan」は大量殺人を犯す人が寄り付く場所で、「メガホン」の役割になっているとすら表現されている。
こうした状況を受け、米国のコンテンツ配信ネットワーク大手CloudFlare(クラウドフレア)などに、「8chan」へのサービスを停止するよう求める声が寄せられた。クライアントが引き起こしている社会的混乱への対処に乗り出すよう、プレッシャーが高まったのである。
結局、「8chan」を運営するのに欠かせないセキュリティを提供していたクラウドフレアは、「8chan」に対するサービスを停止。結局「8chan」は一時、オンライン上から消えることになったのである(現在はダークウェブに移動)。
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