背景にあるのは、日韓それぞれの国内市場の大きさだろう。1億3000万人の人口を持つ日本のビジネスは自国市場でそれなりの満足感を得られるが、5000万人の韓国は自国市場だけでは限界があると認識する。
冷戦終結を受けたグローバリズムの波の中で、韓国のエンタメ業界が世界市場に目を向けるのは自然なことだった。こうした構図は経済全般に共通している。韓国政府はさらに、韓流コンテンツを通じた自国イメージの向上が他の産業にも波及効果をもたらすと考えて政策的に後押しした。
結果として日本の中高生たちをターゲットにしたマーケティングをしているのは、韓流コンテンツばかりということになる。飯塚さんはさらに、韓流コンテンツが漫画など日本の大衆文化の世界観を上手に取り込んでキャラクター作りに生かしていると指摘する。
だから、日本人に受け入れられやすいのだ。日本のエンタメ業界から相手にされていない若者たちが、自分たちに向き合ってくれる韓流に流れるのは当然だろう。
飯塚さんの話を聞いた私は、1934年生まれの長老文化人である李御寧(イオリョン)氏にインタビューした時のことを思い出した。90年前後に韓国の初代文化相を務め、日本でも『「縮み」志向の日本人』などの著作で知られる人物だ。
ソウルでの2012年のインタビューで李氏は、韓流について「純粋な韓国の伝統文化ではない。西洋の文化を新しい形にして世界に発信している。だから欧米でも受け入れられている」と評したのだ。
韓国の西洋文化受容は1980年代まで、日本というフィルターを通すことが多かった。
明治維新以降、西洋の近代文明は日本を経由して朝鮮半島へ流れたし、日本の植民地支配から脱した戦後も冷戦終結までそうした流れは続いた。
李氏のいう韓流のベースには「日本経由で受容した西洋文化」が多く含まれることになる。
だからこそ、日本市場との親和性は特に高くなるのではないだろうか。
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