“悪者扱い”の誤解解く発言も JR東海社長と静岡県知事の「リニアトップ面談」にツッコミを入れる【前編】杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)

» 2020年07月03日 07時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

大井川流域10市町首長に静岡市が入っていない理由

[0:01:43] 大井川流域10市町首長に静岡市が入っていない理由

 金子社長が「知事と大井川流域10市町首長とのリニア関連意見交換会」の内容を踏まえていると発言。この意見交換会は6月16日に開催された。議事録の主な議題は「川勝知事と金子社長は面会すべきか」「ヤード工事を認めるか」であった。前者は賛成多数で、主な意見は「水への思いを知事から社長にしっかり伝えてほしい」。後者は反対多数で主な意見は「有識者会議の結論が出ていない」「有識者会議に失礼」だった。金子社長は「大変厳しいご意見がある」と語った。

 川勝知事が金子社長との会談そのもの、そして論点のヤード工事に関して流域の市町と意見を合わせた。当然の手続きとはいえ、金子社長に伝わっているから話が早い。

 ただし、意見交換会に静岡市が入っていないことが気になった。JR東海が求める3カ所のヤードは全て静岡市葵区だ。これに関しては静岡市の公式サイトに見解が示されている。静岡市は大井川問題を上流域の自然環境保持と中下流域における利水の2つに分けて捉えており、トンネル湧水を上流域に流すことをJR東海と協議中だ。静岡市長と金子社長は2018年に「中央新幹線(南アルプストンネル静岡工区内)の建設と地域振興に関する基本合意書」を締結している。大井川流域10市町は中下流域における利水問題であり、静岡市としては「対話による解決が図られることを望んでいます」という立場である。(参考リンク

 つまり「ヤード問題は中下流域の水利問題」であり静岡市の関心は薄い。ただし、ヤードに至る道は基本合意書でJR東海が建設すると定められ、静岡市に異存はない。

知事と大井川流域10市町首長とのリニア関連意見交換会(出典:YouTube

[0:01:40] 金子社長が反感を買う理由

 金子社長は「ヤード建設についても水の問題をおろそかにするつもりはない」「なし崩しでトンネルの掘削を始めるつもりはない」「有識者会議を軽んじるつもりはない」と明言した。これは大井川流域10市町への不信感を払拭する意味で良かった。ただし、そこから始める「リニア中央新幹線」の意義とJR東海の責務の解説は長すぎた。川勝知事にとっては承前のことであり、大井川流域10市町もリニアの意義については理解している。その上で、静岡県以外の市町村の期待を説明し続ければ反感を買うだけだ。

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